第17話


カクヨム 第4話。オフィスに一人 (第2部)


(シーン:アトリエ・シノハラの受付。日が暮れ、オフィスは薄暗くなっている。菜々美は、受付の女性Bから貰ったコーヒーを飲みながら、静かに座っている。)


前回の続き。粘り強く、こずえシノハラとの面会を待ち続ける菜々美。しかし、時間は刻々と過ぎ、オフィスの閉館時間が近づいていた。


受付の女性A: もうすぐ、受付業務の交代時間ですね。


受付の女性B: そうですね。今日は、本当に疲れました…。


二人の受付女性は、小さな声で、会話を始めた。菜々美は、それを聞かないふりをしながら、コーヒーをゆっくりと味わっていた。


受付の女性A: あの…あの方、まだ待っているんですね…。


受付の女性B: ええ…。本当に、根気強いですよね…。


受付の女性A: いくら待っても、無駄なのに…。


受付の女性B: そうですね…。でも、なんだか、放っておけない気持ちもするんです…。


受付の女性A: まあ、今日は、本当にご苦労様でした。


受付の女性B: あなたもね。


受付業務の交代時間になると、二人の女性は、手際よく引き継ぎを済ませ、帰宅の準備を始めた。


受付の女性A: それでは、お先に失礼します。


受付の女性B: お疲れ様でした。


二人の女性は、菜々美に軽く会釈をすると、オフィスを後にした。


(シーン:アトリエ・シノハラの受付。菜々美は、一人ぼっちになった。オフィスは完全に静まり返り、非常灯だけが、ぼんやりと光っている。)


菜々美は、周囲を見回した。誰もいない。本当に、一人ぼっちになってしまった。


(菜々美、心の中で): みんな、帰ってしまった…私も、帰るべきなのかな…。


しかし、菜々美は、諦めることができなかった。ここまで来たからには、絶対に、こずえシノハラに会って、話を聞きたい。


(菜々美、心の中で): もう少しだけ、待ってみよう…。もしかしたら、こずえさんが、戻ってくるかもしれない…。


菜々美は、受付の椅子に深く腰掛け、目を閉じた。疲労と眠気が、一気に押し寄せてきた。


(シーン:7SEEDS貿易センタービルのロビー。深夜。菜々美は、眠り込んでしまっている。警備員が、巡回中に、菜々美を見つけた。)


深夜。7SEEDS貿易センタービルのロビーは、ひっそりと静まり返っていた。警備員は、定期巡回中に、アトリエ・シノハラの受付で、眠り込んでいる菜々美を見つけた。


警備員: (菜々美の肩を軽く叩きながら)お客様、お客様。


菜々美は、目を覚ました。


菜々美: あっ…!


警備員: 大変申し訳ございませんが、只今、閉館時間となっております。速やかに、退館して頂けますでしょうか?


菜々美は、慌てて立ち上がった。


菜々美: すみません…。


警備員: 何か、事情がおありのようですが…。


菜々美: 実は…どうしても、アトリエ・シノハラの、こずえシノハラさんにお会いしたくて…


警備員: こずえシノハラ様ですか?


菜々美: はい。アポイントは取っていなかったのですが、どうしてもお話したいことがあって…。


警備員は、少し困った顔をした。


警備員: 申し訳ございませんが、閉館時間ですので、お引き取り頂けますでしょうか?明日、改めて、アポイントを取って、お越し頂ければ…。


菜々美は、肩を落とした。


菜々美: 分かりました…。


菜々美は、警備員に連れられ、7SEEDS貿易センタービルを後にした。夜空には、冷たい月が輝いていた。


(菜々美、心の中で): やっぱり、ダメだった…。


しかし、菜々美は、諦めることをしなかった。こずえシノハラに会うためには、どんな困難があっても、立ち向かうしかない。


(菜々美、心の中で): 明日も、また、ここに来よう…。


菜々美は、決意を新たに、夜の街を歩き出した。彼女の心には、再び、小さな希望の光が灯っていた。


(続く)

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