第13話


第十四章:逆襲のシャンパンシャワー


最高級のシャンパンを開け、夢への決意を新たにした菜々美。しかし、心の中には、あの夜の屈辱が消えずに残っていた。先輩ホステスへの怒りと憎しみは、徐々に彼女を蝕んでいった。


その夜、菜々美は、まるで何かに取り憑かれたように、落ち着かない様子だった。いつも以上に笑顔を振りまき、お客様をもてなしていたが、その目は、どこか虚ろだった。


ふと、菜々美の視界に、先輩ホステスとその取り巻きの姿が映った。彼女たちは、いつものように、他のホステス達を嘲笑い、優越感に浸っていた。


その光景を見た瞬間、菜々美の心の中に、抑えきれない怒りが爆発した。


「…もう、我慢できない」


菜々美は、心の中で呟き、立ち上がった。


その形相は、まるで鬼のようだった。普段の明るく優しい菜々美とは、まるで別人だった。


菜々美は、手に持ったシャンパンボトルを強く握りしめ、先輩ホステス達の座るテーブルへ向かった。


周囲の客やホステス達は、菜々美の異様な雰囲気に気づき、騒然となった。


菜々美は、無言で、先輩ホステス達のテーブルに近づいた。そして、テーブルの上に置かれたグラスや灰皿を、手で払い落とした。


「な…!何をする気だ!」


先輩ホステスは、驚きと恐怖で顔を青ざめた。


菜々美は、何も言わずに、シャンパンボトルを振りかざした。そして、思い切り、先輩ホステス達へシャンパンを浴びせた。


「きゃあああああ!」


先輩ホステス達は、悲鳴をあげ、テーブルから飛び退いた。


シャンパンは、彼女たちの顔や服を濡らし、宝石のように輝きながら、床に飛び散った。


周囲は、騒然となり、一瞬、時間が止まったかのようだった。


菜々美は、荒い息遣いをしながら、先輩ホステス達を見下ろした。その目は、怒りと憎しみに燃えていた。


「これで、おあいこだ。私が受けた屈辱を、あなたたちにも味わってもらった。もう二度と、私の前に現れないで。さもないと、今度こそ、ただでは済まさない」


菜々美は、冷たい声で言い放ち、シャンパンボトルをテーブルに叩きつけた。ボトルは、音を立てて割れ、シャンパンが溢れ出した。


菜々美は、そのまま、店を飛び出した。


その夜、菜々美は、人生で初めて、暴力的な行動に出てしまった。しかし、後悔はなかった。むしろ、心の奥底に溜まっていたものが、全て吐き出されたような、解放感を感じていた。


しかし、この行動は、菜々美の人生を大きく変えることになる。


(第十五章へ続く)

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