第3話 鏖殺
のどかな昼下がり。零とフェル、リールは、少し遅めの昼ごはんを食べていた。
「随分早く終わりましたね〜それともこれが普通なんですか?」
と零に聞くフェル。それに干し肉を詰め込みすぎて喉につっかえた零が答える
「ッんん…あ〜普段はもっと早いな〜。今回爆弾で派手にやろうとしたからちょっと時間かかっちまった」
「はえ〜」
「お前こそ大丈夫か?もう俺に付いてくるってなった途端に討伐に乗り出しちまったけど?」
「あ、いえ!流石にこの程度で疲れはしませんでした。あんま長い事歩いたわけじゃないので…。それよりも今回何もしてないほうが問題です。一応弓は一発だけ打ったんですけど弾かれたあとリール君に当たっちゃって…」
当人ならぬ当犬リールは幸せそうに肉を食べてる。しかし、背中に一筋の朱い線が入ってしまっている。かっこいい。
「掠っただけだし大丈夫だろ。」
「うぅ…すみません…」
「クゥ〜ン」
慰めるようにリールがフェルに体を擦り付ける。可愛い。
「同伴するってなってすぐに実戦だししゃーない。それよりもさっさと次の街に行くぞ。道中の森にちょっと用があるからマジで時間がない」
「あ、はいわかりました。」
報酬の受け取りってどうするんだろ…と思いつつそう言って立つと、座っていた金属製の痛い椅子がみるみるうちにリュックへと直る。
「…便利ですよねそれ」
「その分普段は重いのよ」
そんな他愛もない話をしながら森へと入っていく───
──しばらくして、フェルが口を開く。
「にしても木がよく倒れてますね。」
「あの
零はそう言って依頼主である森に住まう怠人(ナマケモノの獣人)の顔を思い出す。家を壊されて泣いていたので、これで安心して新しい家を建てられるようになるだろう。ナマケモノだから凄い時間かかりそうだけど。そうこうするうちに目的の所に着いたので足を止める。
「ここ?」
「ああ。ここに多分…」
言い終わる前に、上から謎の鳴き声が聞こえる。
「何ですかこれ!」
「これが目的の"害悪クソバード"の群れだー!」
「名前可哀想…」
「ただの鳥じゃねーぜ!なんてったって五月蝿い!強い!毒がある!」
「それがこんなにいるんですか!?」
「いや、これは異常発生だな。木がなぎ倒されてるから天敵たち《ナマケモノとか》が木を伝っての狩りができなくなって、結果増えた」
「なるほど」
「さて初陣だ!コイツら賢いけどバカだからあんま逃げない!こんなに数がいれば何処に撃っても当たるだろ!練習だと思って存分に撃ちまくれ!」
「はい!」
こうして始まった害悪クソバード《アンリシード》狩り。フェルが撃ち落として零が捌くという役割分担でサクサク進めていく。
「もういいぞ〜」
「あ、はい」
気づいた頃には鳥たちはほとんど消えていた。
「仕留めすぎましたかね?」
「いや、お前の弓の威力にビビったんじゃね?なんで弓で威力なんて単語が出てくるんだろ…?」
フェルが撃ち抜いた鳥は総じて体の一部が吹き飛んでいるのだ。怖いッス。
「よし。次の街行くか。っとそういえば、お前なんで狩人なりたいんだ?金?」
「あ、いえ。そういうわけでは…」
「なんか深い理由があんのか?てっきり家族の医療費関連だと思って、このクソ鳥肉持たせてさっきの街に帰そうと思ってたんだが…」
「にしては「おい次の街行くぞ〜」ってさっき言ってた気が?」
「細かいことは気にするな。それで、帰らなくてもいいのか?」
「はい。狩人になる理由は詳しくは言えませんが、あっちこっち旅するためなので。」
「そうか?」
「なんで零さんが用済みになるまでついていきます」
「ヒデェな」
そんな掛け合いをしつつ森を歩く。道中いろんな虫が来て、それら一匹一匹に一喜一憂しながら降りていく。
「にしてもリールかわいそうですね〜」
「冷蔵庫背負って貰って助かるわ〜」
「ワゥワゥワゥ!」
遺憾だとばかりに吠え立てる。ちなみにこの犬ぞりみたいにひいてる冷蔵庫は、リールが普段から背負ってるリュックが変形してもの。めっちゃ重い。
「これのおかげでなんか行きより虫が増えた気がします」
「俺虫嫌いなんだけどな〜」
そんな夢のないことを言っていると、人が踏み固めたような道に合流することができた。
「そういえばその鶏肉(冷蔵庫から出した)って毒があるんじゃ?」
「毒があるのは爪だけだよ。俺はその爪の毒に用があってね。肉は適当に売るよ」
「じゃあせっかくだし食べてみたいな〜」
「確かに」
善は急げと言わんばかりにキャンプセットを文字通り広げ始めた一行。爪より薄いだけで肉にもフツーに毒があることを、この時のフェルはまだ知らない
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