こんな日にもプロ野球は

アカニシンノカイ

プロ野球の季節がやってきた

 異常気象だ、といわれて久しい。特にここ三年くらいの実感として、夏が長くなった。春と秋というすごしやすい季節が熱い夏に侵略されている。「熱い」ではなくて「暑い」ですね、小説の公募に挑戦しているのならば、ちゃんとしましょうねとお叱りを受けそうだ。でも、熱いのほうが実感として近い。


 日本でもプロ野球が開幕した。野球の季節は変わらずやってきて、異常気象とは違って短くならないようだ、今のところは。あまりに暑いと「選手や観客のことも考えて夏はお休みにしましょうか」ということになるのかもしれないけれど。実際に甲子園は暑さ対策で変化が起きている。


 あ、甲子園球場で行われるので、高校野球の全国大会を甲子園と呼ぶのです。そんなこと知ってるよ、というかたも多いでしょうが、この企画は野球に詳しくないかたにも向けてやっているので、ご容赦を。連載が続けば、ちょくちょくこの手の「それ説明するの?」があると思います。


 野球人口は減っているそうです。まぁ、そもそも子どもの数が減っている。このままだと「シーズンが半年もあるなんて長いよ、球場も空席が多いし、ビジネスとして成り立たない。日本の景気も悪くて可処分所得も減る一方だ。よし、三ヶ月に短くして集客を集中させよう」と暑さとは別の理由で野球の季節は短くなるのかもしれない。


 レイモンド・チャンドラーの名作『長いお別れ』のなかに、主人公の私立探偵フィリップ・マーロウが開店して間もないバーの雰囲気が好きだと語る箇所がある。


 おい野球の話はどうした、というかたに言い訳をしておきたい。筆者はミステリ好きでもあるのです。あ、大丈夫です。すぐに話を戻しますから。


 プロ野球ファンにとって、開店、もとい開幕して間もない期間は得がたい時間だ。この原稿を書いている四月一日の夜時点で、試合数の多いチームでも四試合しかしていない。四勝と零敗、最大でも差は勝ち四つ分しかない。しかも、シーズンは長い。百試合以上しなければならないのだ。この時点の勝ち負けの数なんて気にすることはない、と今は思っていられる。これは今だけの特権だ。


 そして、シーズン終盤になってから「開幕して四戦目、本拠地での最初の試合を逆転されて負けたのが痛かったな」とか無責任なことを言い出すのもまたファンなのだ。


 よかった。初回なのでどこのチームにも偏らない話ができました。


 え? お前の応援する球団が今日、負けたから好きなチームの話をしたくないんだろう、ですって?


 そんなそんな、まだ始まったばかりで一つ二つの勝ち負けの話なんて……

 明日、勝てばいいんですよ。プロ野球は基本的に月曜をのぞいた週に六日やっているのですから。

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