因果は巡る、呪いは巡る、しかし愛はどこにもない

  • ★★★ Excellent!!!

 タイトルの通りなのですけども、まさに巡る因果のあさましさ、呪いが呪いを呼ぶおぞましさに身震いしました。身に迫る暴力とはこういうものであって、そこに爽快さの欠片もあるわけがなく、ひたすら陰惨でしかないということをつくづく感じさせられました。
 そして何より、痛切なほど愛を求めて得られず、ねじくれて自ら愛を遠ざけ、享楽にふけるままに自己破壊の道を突き進んでしまう主人公の物悲しさが、わたしの心をいたく打ちました。このどうしようもない背反性こそが人間らしさ、といえるかもしれません。
 何にしても、優れた暴力小説でした。これぞプロの手になるもの、というべきでしょう。