天下無双のダンジョン冒険者
克全
第1話:試練
【人類の堕落は許し難い、1年のうちに試練を達成しなければ滅ぼす】
ルクス・デウスと名乗る神のお告げと共に世界中にダンジョンが創り出された!
全人類がルクス・デウスに命じられ、強制的に試練のダンジョンに挑まされた。
「へん、何が神だ、そんなバカバカしい事やってられるか、ムシだムシ」
最初は無視した者も数多くいたが、その所為でダンジョンスタンピートが起きた。
ダンジョンに挑戦しない者を執拗に狙い、何所に逃げても追い回して殺した。
軍隊に護られた独裁国家の権力者であろう大富豪であろうと殺された。
「国民の義務としてダンジョンに挑戦してください。
ダンジョンに挑戦せずにモンスターに狙われても国は助けません。
ダンジョンに挑まずモンスターに殺されてもケガさせられても、保険適用外です」
世界中の人類が、滅亡を逃れようと必死でダンジョンに挑む。
日本でもダンジョンに挑まない人の所為で、私物や公共物が破壊され大損害を出しており、ダンジョンに挑んだ人が巻き込まれてケガをする事もあり、義務化された。
「国民のダンジョン挑戦を管理するためのダンジョン庁を内閣に設置しました」
最初日本政府は、ダンジョンを国営か特定企業の許認可制にしようとしていた。
自衛隊や警察にダンジョンを封鎖させ、慎重に探索を重ねた結果、莫大な資源がある事が分かったからだ。
「民間企業連合が設立した民主的なダンジョン協会で、国民の皆さんがダンジョンで手に入れられた産物を適正価格で買い取ります」
だが、国民の命がかかっているだけでなく膨大な利があると分かってからは、野党や経団連からの激しい突き上げがあり、国家統制が難しくなった。
民主主義国家の多くが民間開放したので、世界の潮流には逆らえなかった。
★★★★★★
「ここまで来てやったぞ、邪神ルクス・デウス!
お前の試練に打ち勝って、地下100階まで来てやったぞ!
人類を滅ぼすという傲慢な命令は、これでは取り消してもらう!」
無数の死線を掻い潜り地下100階にたどり着いた八百鬼竜也が言う。
同じように死線を潜り抜けてここまで来たパーティーメンバー6人と共に、地下深くで人類を滅亡させようと企てていたルクス・デウスに言い放つ」
【まだだ、まだ我の試練を乗り越えたとは言えぬ。
人類が滅ぶべき卑怯下劣な生物だという事を明らかにする。
最後の試練に打ち勝って見よ】
「良いだろう、試したいなら試してみろ、必ず勝って見せてやる」
【その言やよし、卑怯下劣、悪逆非道な人類にしては天晴れである。
その心意気に免じてその方だけは助けてやる。
それどころか、下級神に取立てて我の配下に加えてやろう。
仲間の6人を殺すなら、不老不死と栄耀栄華を約束してやる】
「馬鹿にするな、背中を預け肩を並べて戦った戦友を裏切るような卑怯者じゃない!
さっさと神の試練を始めろ、成し遂げて人類を救って見せる」
【そうか、だったらやって見せよ】
ルクス・デウスからの攻撃に全神経を集中していた八百鬼は、背後が死角だった。
戦友たちに背中を預けて、前にいるルクス・デウスの攻撃にカウンターを当てる事に集中していた。
ドーン
ギュウウウウウン
ズッパ
シュッバ
ズッシャ
ジャッキ
八百鬼の背後から6種の遠距離攻撃が放たれた!
水属性魔術で創られた圧縮水槍と、火属性魔術で創られた圧縮火槍。
魔力を込め毒が塗られた投槍と、魔力を込め毒を塗った十字手裏剣。
魔力を込め毒が塗られた剣と、魔力を込め毒を塗った矢が放たれたのだ。
「グッ、ガ」
無防備だった背中に、地下100階にまで降りられるくらい強い冒険者たちの攻撃を6つも受けたのだ、各国最強の冒険者でも即死する。
「バカが、不老不死の神に成れるのだぞ、拒否する訳がないだろう」
「以前からてめぇの善人ズラにはムカついていたんだよ!」
「きれいごとばかり言うお前は、以前から目障りだったんだよ」
「死にたいならお前1人で死ね、俺たちを巻き込むな、正義の味方様」
「どれだけ金をもらっても死んだらお終いなんだよ、バカが」
「神に勝てると思っているお前が愚かなんだよ、俺様はそんなバカじゃない」
だが八百鬼は殺されなかった。
7人パーティーの中でも突出した実力を持つ八百鬼は、6人の攻撃の耐えた。
はっきり言えば、世界最速で地下100階に到達できたのは八百鬼のお陰だった。
他の6人はとても世界のトップとは言えない、お粗末な実力だった。
「おのれ、邪神の誘惑に人の誇りを捨てたのか?!」
「ちっ、しぶとい奴だ」
「てめっが死なないと神に成れないんだよ」
「俺たちのためにさっさと死にやがれ!」
八百鬼はパーティーメンバーの裏切りに激怒した。
怒りと同時に、自分以外の6人全員が人類を裏切った事が心から哀しかった。
「人類の恥は死ね!」
聖剣騎司のスキルを使って自らを回復しながら、聖剣で道明寺の心臓を貫く。
「グッガ」
八百鬼は戦友に裏切られながらも冷静だった。
パーティーメンバーの中で1番治癒術に優れた、治癒術司系賢者の道明寺賢三から殺すくらい、冷徹に戦況を見極めていた。
「「このやろう!」」
魔剣士の金山巌と魔忍者の忍野勝也が、殺し損ねた八百鬼に止めを刺そうとする。
剣術スキルと暗殺スキルを使って八百鬼を確実に殺そうとする。
「お前らの相手は後だ」
八百鬼はそう言うと、魔術司系賢者の星山哲也の心臓も刺し貫く。
「ぎゃっ!」
接近戦が不得手な、支援系の治癒術司系賢者と魔術司系賢者を確実に殺して、他のパーティーメンバーが回復魔術を受けられないようにした。
「どけ、邪魔だ、一緒に射貫くぞ!」
八百鬼は魔弓師の松岡秀太から狙われないように死角を選んで移動する。
最も格闘術と暗殺術に長けた魔忍者の忍野勝也を、戦いながら死角に誘導する。
「くそ、クソ、糞、なんで俺様より格闘が強いんだ、てめぇは剣士だろうが?!」
忍野勝也は魔忍者の自分よりも動きの速い八百鬼に悪態をつく。
魔剣士の金山巌と魔槍士の皇征四郎は、全く連携を取れていない。
「しね、シネ、死ね、さっさと死にやがれ!」
これまでは最低限の連携が取れていたのに、今では邪魔をしあっている。
如何に八百鬼の存在が大きかったか、欲深く自分勝手な6人を誰が纏めていたのかが良く分かる現実だった。
「もう少し待っていろ裏切者、直ぐに相手してやるよ」
八百鬼はそう言うと矢を射ろうと弓を右往左往させていた松岡秀太に接近する。
2人立て続けに心臓を刺し貫かれたのを見ていた松岡秀太は、思わず左手に持った弓で心臓を守ろうとしたが、八百鬼が狙ったのは首だった。
シュッパァアアアアア。
八百鬼は目にも見えない早さで松岡秀太の首を斬り飛ばした。
斬り飛ばされた首の付け根からは心臓の拍動にあわせ血が噴水のように吹き出す。
心臓を刺し貫いた時とは違って、周りが血塗れになる。
松岡の首を刎ねた八百鬼を背後から殺そうと忍野が近づいたが、駄目だった。
忍野は聖剣騎司である八百鬼が右手に持つ剣を警戒していたが、愚かだった。
魔忍者の忍野よりも素早い動きをする八百鬼を甘く見過ぎていた。
「グッ、ゲ」
「さあ、お前の番が来たぞ、地獄に落ちろ」
強烈な左手の貫手で、忍野の心臓を差し貫いた八百鬼が言い放つ。
心臓を貫かれた忍野は、激痛と驚きで目玉が飛び出るような表情をしていた。
八百鬼を罵ろうとしたようだが、青くなった舌が飛び出しただけだった。
「死にやがれ!」
「ウォオオオオオ」
立て続けに裏切り仲間が殺された魔槍士の皇征四郎と魔剣士の金山巌は、恐怖のあまり慌てふためき、大声と唸り声を上げながら攻撃してきた。
「人類を裏切った報いを受けろ!」
八百鬼は舞うような美しい動きで2人を迎え討った。
最初に間合いの遠い魔槍士皇征四郎の懐に入って首を刎ね飛ばす。
迫って来た金山巌の剣を、皇征四郎から奪った槍を左手1本で振るい弾く。
「お前で最後だ!」
八百鬼は剣を弾かれて無防備になった金山巌の懐に入る。
懐に入ると同時に、右手に持った聖剣で金山巌を完全鎧の上から胴斬りにする。
最高級のはずの完全鎧を紙のように易々と斬り裂いて真っ二つにする。
「待たせたな、邪神ルクス・デウス、手前を殺して全部終わらせてやるよ」
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