第4話

「君、誰?」


「えっ?」


頭を抱えて座り込んでいた私の目の前に、爽やかな笑顔を浮かべたイケメン男子が立っていた。


「ずっとここにいた?」


「いや、えーっと」


「見ない顔だけど、一年生?」


「はい、いえ……」


「どっち?」


クスッと笑った彼は、床に置いていた読みかけの本を取り上げると、中から貸し出しカードを抜き取った。


「今だに電子化してないなんて呆れてたけど、役に立つもんだね、1-2安西かすみさん」


あ~あ、クラスも名前もバレたよ。

どうして図書室で借りた本なんて持ってきてたんだろ、私のバカバカ!


「あ、あの、な、何も聞いてないし、見てませんから」


「そんなわけないでしょ」


「だ、誰にも、何も、言いません」

言えるわけないよー。


「ふ~ん、本当かな? このカード預かるから、明日の放課後、生徒会室まで来てくれる?」


「……は、はい」


「じゃ、明日ね」


ニコリと爽やかな笑顔を残して、彼はカードを手にきびすを返した。



んっ? 生徒会室?


あっ、お、思い出した。

とびきり爽やかな、あの笑顔。


――生徒会長だ!


入学式で、壇上に立って挨拶した生徒会長。


彼の登場で一気に体育館が盛り上がっていた。

堂々とした挨拶で、誰もが惹きつけられる見事な内容だった。


あの生徒会長が――!


本当に人って見かけに寄らない。

あの爽やかな生徒会長が、妹と禁断の恋なんてっ。


たとえ私が誰かに話したとしても、信じてもらえないに決まってる。

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