第2話

「ダメだよ」


「どうして? 奈緒、ファーストキスはお兄ちゃんとって、ずっと決めてたんだよ」


「それは、もっと大人になってから」


「もう高校生なんだよ。同じクラスで、彼氏とキスした子なんて何人もいるんだから」


「奈緒を誰よりも大事に思ってるから、言ってるんだよ」


「ヤダ、お兄ちゃんとキスしたい。それ以上だって……」


うわー、大胆だな、この子。


「しょうがないな。ほら、おいで」


えっ、キスするの? 今、ここで? 

いや、やめてよ。二人きりじゃないんだよ。


でも、今更出て行けない。


そもそも誰なんだろう。

どうしても気になって、そっと顔を覗かせた。


すらっと背の高い制服男子の後姿が目に入る。


女の子の両手が彼の背中に伸びて抱き付いた。


「好き、大好き。もっとギュッとして」


「残念、時間切れ。次、体育だろ。早く戻らないと」


すぐに距離を取られた彼女の顔が見えた。


うわー、すっごく可愛い子だ。頬がほんのり赤くなってる。


「うん。また放課後ね」


もう目の前の彼しか見えていない。

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