第19話

直『はぁ…っ!課長…かちょ…ぅ、はいんない…っ』



暗い部屋の中、はしたない声が響く。

窓の外には街灯がまばらに見えるだけだ。



直『あぁ、課長…課長…』

藤「…もっと動けよ。そんなんじゃ、おまえだって満足できないだろ?」



バスローブを羽織っただけの課長が、頭を枕にのせて、まっすぐに俺を見つめる。

…見られてるんだ。

裸になり必死で動いて、課長のそれを自分に入れようとしている、あさましい姿を。

そう思うだけで、俺自身はひどく昂っているのに。



藤「どうして入らない…?」



イラついたような課長の表情。

あぁ…どうしよう。どうすればいいんだろう。俺は、気持ちは、こんなにしたいのに。



直『ごめんなさい、課長…おれ…』

藤「……」



目を閉じた。途端、まぶたの裏にこれまでのたくさんの行為がよみがえってくる。


会社の更衣室で、鍵もかけずにしたこと。

飲み会の後、課長の家の玄関先で立ったままされたこと。

スーツのベルトを首輪みたいに付けられて、「こうすればおまえを閉じ込めておけるかな」と言われたこと―――



藤「何を考えてる?」

直『課長の…ことです』

藤「俺の?」

直『…そう。あなたが、いっぱい俺にしてきたこと…思い出すと…俺、思い出すだけで、なんだか、体が…』



あんなことも、こんなことも。全部課長に教え込まれた。

そう思って自分自身と胸に指をかける。驚くほど自然に、腰が揺れた。



直『かちょ…、あぁ課長っ、課長、抱いて…イっちゃう…!』

藤「ふざけんな」



えっ、と目を開けると、これ以上ないくらい不機嫌な顔をした課長が見えた。

くるりと体を反転させられる。



直『え?…え、課長?』

藤「想像の中の、俺…だと?」

直『あ…はい…』



怒りを帯びた声。それでも俺だけ見てくれる瞳。

あぁ、課長…どうしよう、俺…



直『あぁあ…!か、ちょぉ…っ、課長、あぁ、あん、やっ、あぁっ!』

藤「てめぇ、いい加減に、しろっ…」

直『んぁ、課長…っ、やぁ、激しいっ…ぁああ…!』



一気に全部埋め込まれて、つらいのに。

体は悲鳴をあげているのに。



藤「こっち、見ろ」

直『あぁ、あ、課長、かちょおっ、あっ、あっ…』



後頭部をつかまれ、抱き起こされた。

つながったまま2人で座る形になる。



直『あぁ…、課長、課長…深い…ぃやぁ…!!』

藤「由文」



ささやき声に似合わない、かみつくようなキス。



藤「イくなら俺でイけ」

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