第14話
直『ん…か、ちょう……、はぁ…』
藤「直井…」
唇から、舌へ。2人で遠慮がちに絡め合う。
ああ…すごく気持ちいい。どうしよう、俺…
直『課長…は、ぁあ…課長っ…』
藤「もっと、ほしいか…?」
直『…はい。課長…おれ…課長に、ほんとは…こういう風に、されたかった…!』
涙をこぼす俺を、課長がまた抱きしめてくれる。
今度は俺もしっかりと抱きしめ返した。
もしかしたらこのままいつかのように、ひどい扱いをされるかもしれない。
でもそれならそれで、もういい。ほんの少しでも課長と心が通じたと思えたんだから。
直『…課長。最後のお願い、聞いてくれますか』
藤「最後?」
直『俺ね、課長の目がすごく好きなんです。メガネの奥から、俺のこと見てくれる目が』
藤「えっ」
直『もうわがまま言いません。迷惑もかけないようにします。だからお願い』
課長の胸ポケットに手を入れた。
さっき外したメガネが入っていた。
直『…俺を見てください』
そっと、俺の手で課長にかける。
ちょっとバランスが悪かったらしくて、課長の中指がクイッと位置を直した。
藤「どうだ?」
直『すごくかっこいいです。…俺の顔、よく見えますか』
藤「ああ。すげぇエロい顔してる」
直『…課長には負けますよ』
そう言ったら、課長は照れたように笑った。
皮肉な笑みでも意地悪な微笑でもない。ただただ、嬉しいだけの笑顔。
藤「最後のお願いって言ったな」
直『あ……、はい…』
藤「最後じゃなくていい」
直『え?』
どういう意味だろう。
もしかしてこれは、俺が都合よく見ているだけの夢なんじゃないか。だって課長は俺のことなんか…
混乱している俺の目元や首筋に、課長が唇で触れてくる。
直『あ…ぁ…』
藤「好きだ」
直『うそ…うそ!そんな、課長…!』
藤「嘘じゃない。おまえにそばにいてほしい」
直『あ…っ』
涙が止まらない。
どうしよう。もう今の言葉だけで、俺はいつ死んでもいいっていうぐらい幸せだ。
直『課長…かちょう、俺っ』
藤「はぁ…由文…」
直『あ、かちょ…』
ゆっくりと茂みの中に押し倒される。
もう止まらない。口づけをかわしながら、互いに服を脱がし合う。
直『課長…おれ、もういつ死んでもいいです』
藤「ばーか」
くすりと、ほんの少しだけ意地悪な笑みが見えた。
藤「どうせなら、俺と一緒に天国行こうぜ」
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