パート8: 「分裂」の兆候
【吸収】を数回繰り返し、俺は少しずつこのダンジョンに関する知識を蓄積していった。
どのエリアにどんな魔物が生息しているか、どこに危険な場所があるか、どこなら比較的安全か。断片的な情報をつなぎ合わせることで、徐々にダンジョン内の地図が頭の中に描かれていく。
【吸収】によって得られる魔力(?)のおかげか、体も心なしか以前よりしっかりしてきた気がする。
(よし、この調子で情報を集めていけば……)
生き残る道筋が、ほんの少しだけ見えてきた気がした。
そんな風に、わずかな希望を感じ始めていた矢先のことだ。
体に、また奇妙な変化が現れ始めた。
(ん……? なんだ、この感覚……?)
体の表面の一部が、まるで分離したがっているかのように、ムズムズと蠢くのを感じる。
最初は気のせいかと思ったが、その感覚は次第に強くなっていった。
まるで、体の中から何かが生まれようとしているような……あるいは、体の一部が千切れ落ちそうになっているような、そんな不安定な感覚だ。
(まずい、病気か!? それとも、【吸収】の副作用か……?)
不安がよぎる。
得体のしれないスキルだ、どんなリスクがあるか分からない。
俺は慌ててその部分に意識を集中し、何とか抑え込もうとした。
だが、その試みは無駄だった。
ムズムズとした感覚はますます強くなり、ついに、俺の体の一部が、プチッという小さな音と共に分離したのだ。
ポヨン。
目の前に、俺の体から分離した、小さな青いスライム――俺のミニチュア版のようなものが、一つ転がっていた。大きさは、元の俺の十分の一くらいだろうか。
(……は? 分裂した!?)
何が起こったのか、すぐには理解できなかった。
俺はスライムだから、分裂して増える……というのは、ファンタジーのお約束ではある。だが、それはもっとこう、細胞分裂のように自然に行われるものではなかったか? こんな風に、体の一部が勝手に千切れて生まれるなんて、聞いていない。
俺は恐る恐る、目の前の小さな分裂体に意識を向けてみた。
すると、さらに奇妙なことが起こった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます