【書籍発売中・漫画化】異世界転生したけど、探知スキルしかもらっていない(完結済み)
きゅっぽん
第1章 ジークリンデ・ゴルドベルガー編
第1話 ゴルトベルガー伯爵令嬢
俺の名はレン。今、異世界の酒場で昼飯を食べている。
メニューは木のボウルに入った干し肉と豆、カブが入ったスープとやや雑穀の混じったパン、それと木製のジョッキに入った薄いビールだ。まだ昼だが、窓が小さいせいか店内は薄暗い。ちょっと脂や酸っぱい匂いもする。ここはたぶん、この街一番の食堂なんだがこの世界ではこんなものらしい。なぜ、ここが街一番の食堂かって?街の真ん中なのと通りの目立つところにあったからだ。
なぜ俺がこんなところにいるかというと、少し話は長くなる。俺は日本に住む日本人の20代後半のソフトウェアエンジニアだった。残業で深夜に自宅アパート近くの狭い道を歩いていたところ、普段通らないような大型トラックが爆走してきて
一度、意識を失った後、白っぽい空間で目が覚め、姿の見えない女神さまっぽい声に、手違いで死亡したので代わりに特典付きで異世界に転生するか、そのまま成仏するか選ばせてくれると言われた。異世界は魔法や魔物がある、いわゆる中世っぽいファンタジー世界だという。ネット小説のテンプレだ。転生しても魔王を倒せなどという使命はなく、好きに生きていいと言われたので、せっかくだし転生を選んだ。
なお、転生特典は10代後半への若返り、現地の言語・文字理解、それと内容がランダムで選ばれる恩恵だという。また、特典ではないが外見は今の日本人の面影を残しつつ、現地人種でもおかしくない外見に変更された。良いか悪いか分からないが、黒髪黒目のいかにもな転生者にはならなかった。
さらに現地の行商人の一般的な持ち物ももらった。なぜ行商人かというと、特典で戦闘系の恩恵が得られなければ日本にいた時と同じ技術しかないので、武装してても見掛け倒しになるし、転生後は中規模の一般的な街の外に現れるらしいが、街の外から一人で徒歩で来る一般人で怪しまれない者といえば、行商人くらいしかないかららしい。
服装は綿の長袖シャツと膝下ズボン、革靴、フード付きマントで、鞄などと針や糸などの目立たない少量の商材と少量の現金も一式もらった。あと鎧はないが、一応手槍と短剣も1本ずつ持っている。これくらいの武装は徒歩の行商人は普通らしい。
そして転生後、俺は遠くに街が見える街道に
俺は街まで歩き、中に入った。街に入るには別に身分証とか通商券とかは不要で、入市税も無かった。ただ、俺の前に入ろうとしたゴロツキっぽい男達は締め出されていたので、身なりで判断しているらしい。それから俺は街の真ん中の大通りを歩き、とりあえず飯という感じでこの店に入り、今に至る。
一応、考える時間とかはあったので、今の俺は冷静でいられているが、途方に暮れていると言えば、途方に暮れている。
この世界でソフトウェアエンジニアの知識なんか役に立たなそうだし、マヨネーズや
魔物がいて、冒険者もいる様だが、俺にできそうな気がしない。俺は格闘技といえば高校の授業でやった柔道くらいしか経験はないし、武器になりそうな物などバットくらいしか振った事がない。『探知』の恩恵はまだ正体がよく分からないが、きっと直接的に戦闘能力を上げるようなモノではないだろう。魔物退治をあえて現実に当てはめれば、外国のジャングルに行って槍一本でワニを狩りに行く様なものだろうか。絶対嫌だ。
体はともかく、精神的にはいい大人のせいか、異世界に来た高揚感よりも、今後の不安感で若干
そんな時、その女の高慢そうな声が聞こえてきた。
「ふん、もうちょっとマシな店はないのか。
変な匂いもするし、ごちゃごちゃと汚い。こんなんじゃ大した食事が期待できそうだな。」
文の前後が間違っているように思えるが、期待できそうだな、と言うのは嫌味だろう。もう揉め事が起こる予感しかしない。
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