第43話
それからだ。
私へのいじめが始まったのは。
自業自得と言われても仕方がないかもしれないけど、私は私が選んだ道を歩いて後悔して、たったそれだけのことでいじめられる筋合いはないと思っていた。
やりたいことをやって迷子になっただけ。煙草を吸ったお酒を飲んだ身体を売った。うちの親は良心的じゃないけど、親にぶたれるのは仕方がないと思う。
でも、それで学校の誰かに迷惑をかけたことはない。一度も。
――そもそもヒナ兄は私をいじめるための口実を作りたかったのだと思う。
私の感情などどうでもよく。
年上の彼氏を紹介したのはヒナ兄で、その人はヒナ兄の友達だった。
煙草やお酒は私の意思だけど、悪い人とつるみ始めたのはヒナ兄の周りにいた人だったから。みんな優しくしてくれたから甘えていた。
援助交際に関しては、お金がないと言った時の仕事を紹介されたのがソレだった。ヒナ兄の女友達だった。女子高生で、その人も優しい人だったから。
無知な私はすぐについて行ってあっさり騙された。理不尽だと喚くつもりはない。もちろん、私が馬鹿だったから起きた事故。彼女を責めるつもりもない。
全部、ここに繋げるためのヒナ兄が仕組んだ罠だったのだ。ヒナ兄が退院し逮捕され、そういった裏話まで表沙汰になった。
――夜の散歩。コンビニの光が眩しくて、近くの公園のベンチに腰掛けた。
「はあ」
額に熱湯を浴びせられたことで、私の額には大きな火傷の痕が残っている。それは左こめかみから上頬辺りにまで続いていて、すっぴんなんてとても晒せるものではない。
私はそりゃあ不細工かもしれない。あるいは決して美人になれない凡人かもしれない。でも不細工や凡人だって顔を大事にするし、化粧をしたいし、綺麗になりたいし、これは私にとってなにより心に傷を残した。
何年経っても消えやしなくて、ずーっとその日の記憶と付き合い続けるのだと。そう思うと胸が苦しくて堪らなくなる。
ロウにだって見せられない。
否定されるのが怖くて。今更だって分かっているのに不安だけが離れない。
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