第39話
ヒナ兄が私の頭に触れた。優しく手のひらを乗せるようにして。恐怖からくるものなのか息が上がる。
「怖がらないで」
「……っ、」
優しく笑ったと思えばすぐに表情を変えて、私の唇にキスをした。ああこれは有言実行? 私はヒナ兄に犯される?
身体が硬直しているのが全身に伝わる。まるで石になったような気分。私が拒絶したら、ヒナ兄の足元からそう遠くないところに飛んだ銃で脅されるのかもしれない。
全てが恐ろしくて否定も肯定も出来ない状況が続いた。繰り返されるキスに私はただ呼吸だけを繰り返した。
「い、ってえな」
ロウが痛みに苦しんでいる。声しか聞こえない。見たくてもヒナ兄が目の前にいるから。
「ヒナ、兄……っ、ん」
ヒナ兄が目を閉じた。そのタイミングで横目でロウを見ると、なんとなく動いていた。もしかすると銃を取ろうとしているのかもしれない。
ヒナ兄をぎゅっと抱きしめる。せめてもの想い。ロウに対して。これは、全部、ロウへの愛なの。
「だい、すき」
私はロウのために、どんな嘘だってつける。綺麗な人間なんて私の中には要らないから――
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