第18話

「でも友達付き合いが苦手」


「なんでさ」



なんでって言われても、それはちょっと言いたくない。


ちらっとヒナ兄を見ると、無言の圧力をかけてきていた。嫌だなあもう面倒臭い。



「友達がロウを好きになるかも」


「また話が飛ぶ。なんで」


「私より可愛いから」


「友達が誰かわかってないやつの言うことか、それは」


「絶対そう」



私は化粧お化けだから。今は化粧してるから、たとえお化けであってもなんとなく平均顔になってるはず。美人ならしないであろう苦労をしてきたんだ。



化粧しない自分なんて想像できるか。

否否否否無理。絶対無理。



パチンコ店で出会ったあの女達みたいにすっぴんをSNSに晒す?


私がやったら知らない人に誹謗中傷浴びせられた挙句に刺されるわ。



別に誰がなにを載せようが知ったことじゃないし、その人が美人でも羨ましいくらいだ。



私は私にしかなれない。




「整形したい」


「中学の頃の、根に持ってる?」


「持ってるよ。そりゃ」



座椅子の上で体操座り。



私がお子様すぎるのか。いつまでも根に持ってるのって悪いことなの? トラウマってやつ、あるでしょ。誰にだって嫌な記憶くらいあるでしょ?



「ふうん。整形したいならすればいいんじゃない。アタシは全身整形したからね、いいクリニック教えてあげるよ。あんたがそのために金貯めてそのために人生のいくつかを支払って、それを達成した顔でロウに会えるならね」



「……無理」



「だろうね。あんたはあんたにしかなれないの。別人の顔になってまでロウに好かれたいとは思ってないの」



「でも私はロウが好きだし。いまのまま好いてもらいたいって思ったら、ダメなわけ?」



私にしかなれないのは分かってるんだって。化粧したって私は私なんだよ。嫌いな顔してんだよ。



「あんたのまま好いてもらえばいい。ロウがあんたに気があるなら、あんたの顔なんて気にしてない」



「ロウだって美人とブス並べたら美人がいいって言う。気がないから終わりなんだよ。私が諦めるしかないんだ」



「ああもうネガティブうざい! 整形したくないけど今の嫌いな顔で好いてもらいたいとか傲慢すぎる」


「……確かに」




私は我儘で傲慢だ。

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