第15話

「ヒナタのはヒナ兄のせいじゃない。不運な事故だよ」


「分かってるけどね。そんなの。でもあれから誰かと付き合っても、罪悪感が離れない」



その罪悪感を消すために、誰かと繋がっていたいって言っていたのに。どうなっているのか。



でもここは私が踏み込む場所じゃない。ヒナコにはヒナコの領域があって、ヒナコの友達が触れてくれる。



やっぱり、私、冷徹か?

誰かの恋愛事情に興味はない。



すごいって思う人には迷わず拍手するし、助けを求める人には手を差し伸べる。それくらい。



「ねえ、いつまで玄関で話すの?」


私靴履いたまま。



「あ、ごめん。忘れてた」


「泣いてる?」


「泣いてねーわ!」



さすが。

普段は相変わらず。


女口調はいずこへ。



「さて、あんなクズ男のことはさっさと忘れてあんたの話でも聞こうじゃないか?」


「クズ男と付き合ってたの?」


「だからもういいっつってんだろうがあんなクズしつけえなあお前は」


「こわ」



せめて途中で息継ぎして欲しい。

聞き取りづらいったらありゃしない。



玄関からリビングへ上がって、リクライニングの座椅子に座る。



煙草を吸いながら戻ってきたヒナ兄は、ワンピースを脱ぎ捨てて普通に男の格好をしていた。あら不思議、すごくイケメン。



この人ハーフだし。国の方ね。地毛が金髪で目はなんとなく青みがかっている。



「ほら、飲めよ」



女口調は、いずこへ。パート2。


完全にいつものヒナ兄だ。たまにこの人二重人格じゃないかと疑ってしまう。



出された缶コーヒーはロウの家で飲んだものと全く同じ。苦いこと間違いなし。



「お前ロウのどこが好きなんだ?」



ブラックとか微糖とかなにが美味しいの?

こっちのほうが気になるんだけど。



「聞いてんのか」



「聞いてますすいません。ロウはツンデレなので私のこと追いやっても意外と私のこと好きなんじゃないかなあみたいな」



「はいそれ思い込み。次」


「ロウは優し過ぎるから心配になる」


「それ恋愛感情か本当に」



いまのは誰目線だったんだろう。

ちょっと頭の中が混乱してる。

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