第12話

――翌日、私は完璧に荷物をまとめた。面倒臭い女プラス嫌な女と彼女さんに思われないためにもキッチリ掃除もした。



どうだ!

髪の毛一本落ちていまいよ。



ここまでする理由があるのか? 義理があるのか? 義理はある。理由は……自己満?



「ねえねえローウェル」


「誰?」


「あんた」


「ローウェルって誰だよって言ってんだけどな」



「珍しく朝っぱらから煙草吸ってやんの」


「お前に文句言われる筋合いねーわ。さ、出てけ出てけ。まるで田舎から上京するみたいな格好で出てけ」


「はっ、バカにすんな馬鹿野郎!」



田舎から上京するにしてもこんなに荷物ないわ。修学旅行で使うようなボストンバッグが両手にひとつずつと、山登りの勢いのリュックがひとつ。


とんでもねえ。



「なんでそんなに荷物あんの?」


「私に聞かれても……」


「要らねえもん置いてけよ、処分しといてやるから」


「いいよいいよ、あたしゃ迷惑かけたかないしね」


「嫌味ったらしいやつめ。今更だっつってんのに。ババアみてえな喋り方しやがって」


「なんだって?」


「なんでもねーわ」



全部聞こえてますけどね。

まあいい。



この口喧嘩が出来なくて寂しくて泣きそうだわ。ほら、言い合える人がいないとストレス溜まって死にそう。



……な、わけあるかい。

そんなもんでストレス死するか。



「さ、早く行け行け」


「私どこいけばいいの?」


「知るか」


「アパート借りる」


「そうしろ」


「アタシ、大金持ちになって高層マンションの上の方住んでやるからね!」


「大金持ちとか言ってる時点で中身子供だろ。まあ頑張れよ」



どうしても煙草が吸いたいらしい。話しかけられるのがウザいらしい。分かった。もういい。私がしつこかった。



「じゃあな! あばよ」


「なんなんだあの女」



今更なんでしょうよ、ぜーんぶ。

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