第11話

「どうしたんだよ」


「え」


「傷ついた顔してる」



そこまで分かるのにどうして理由が分からないんだ。不思議すぎる。



いやもういっそ気づかないままであって欲しい。終わりを迎えるなら、面倒なことにしたくない。



どうせロウは私のことを恋愛対象として見てはいないだろうけど、限りなくゼロに近いその心を私が揺らしてしまうとね、彼女さんに申し訳ないしね。



冗談だろおい自分。



「もう寝るから出てって」


「あー、そう。俺の家だけど」


「分かってるよごめんよ!」



お邪魔虫がいつまでも住み着いてごめんなさいな。



ロウが部屋から出て行く。背中が大きい。草臥れたその黒いTシャツは部屋着。破れるくらい引っ張って引き止めたかった。



最後くらい抱いてくれたっていいのになあ。自分が何を考えてどうしたいのか絶賛迷子中だわ。いや絶賛ってなんだ絶賛って。



ベッドに寝転んで天井を見つめた。なーんの柄もない真っ白な天井。ロウの部屋はロウが煙草を吸うから黄色くなっているけど。



本来の色はこれだ!



……。



さっきの私の態度悪かったよね。絶対悪かった。「その報告いる?」って。してくれなかったら絶対「なんで教えてくれないの」ってなるくせして。



5年も一緒にいるのに、なんでこう微妙なところで噛み合わないのか。

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