第16話
「……やだ。嘘。」
「あの日、8月20日。ちょっと遠出したいね、って言って俺が車運転して県外行く予定だったよね。」
「やめて、お願い。」
「それで高速乗ってる時に後ろから、」
「やだってば!聞きたくない!なんで!?このままずっと二人でいようよ!ねぇ、なんで、」
「飲酒運転で暴走した大型トラックが突っ込んできた。……覚えてる?」
一歩、また一歩と後退ってトン、とついに冷蔵庫に背がつく。
大好きなはずの彼の優しい声が、あたしの鼓膜を甚振る。
「……やだ。ずっと二人でいようよ。」
震える声。
瞳に張った薄い膜のせいで視界に映る湊が揺蕩う。
「…ごめん。」
「謝んないでよ。今日のことは忘れるから。だからさ、今まで通りにしてよう?そしたら、ずっと…ずっと、」
「茅子ちゃん。戻らなきゃ、だめだよ。」
ーーーーああ、何も知らないままが心地よかった。
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