第11話

「…ん?」


「ごめん、起こしちゃった?」


「ううん、大丈夫。」


彼の腕を枕にして寝るあたしを見て彼は満足気に微笑みながら


「なに?」


「可愛いなぁって。」


あたしの髪を耳にかける。

彼と同じ淡い茶色の髪を彼は何度も何度も指で梳いた。

この人は時々泣きそうな顔をして笑う。

この瞬間を噛みしめるように。


「茅子ちゃん、お風呂入る?」


「…え?」


「汗。いっぱいかいたでしょ?」


妖艶に口角を上げ意地悪く微笑んだ彼のおかげで、上の空だった私の意識は一気に引き戻された。

全身茹でダコのように上から下まで真っ赤になった私を抱き上げようとする彼の手を慌てて静止する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る