第3話

「茅子ちゃん、お腹空いてない?」


「あ、ちょっとだけ空いたかも。」


「夜ご飯つくったんだけど食べる?」


「うん。」


あたしが頷くと、彼は嬉しそうにキッチンへと向う。


「いい匂いがする。」


「本当?味見してないことは秘密にしておこう。」


「お兄さん、心の声が漏れちゃってますよ。」


あはは、なんて戯れあいながらあたしと彼は何日も何日も同じ日々を過ごした。

外に出かけることはなく、ただ家でまったりするだけ。


何も知らないあたしと何も言わない彼の奇妙な生活を、あたしは少しずつ楽しみ始めていた。



二人がけの木製のテーブルと椅子。

所々に置かれた観葉植物。

薄ピンク色のソファに小さなテレビ。

白い戸棚の上に立てかけられた写真立てに収まるのは幸せそうな私と彼ーーーー。


多分、ここは私の家で、きっと私達は恋人同士……なんだと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る