第2話

「…茅子(ちこ)ちゃん?」


遠くで優しい声が聞こえる。


「…目が覚めた?」


優しくて、どこか聞きなれた声があたしの鼓膜を甘く揺らす。

まだ半分夢の世界に足を突っ込んだぼやけた意識のままゆっくりと体を起こした。


「えっ、大丈夫!?まだ…寝てなよ。」


あたしが急に起き上がったことに驚いたのか、淡い茶髪の彼は少し慌ててあたしにかけよった。

あたしの肩を抱く腕は、紡がれる言葉は酷く優しくて温かい。


だけど、あたしは


「……ごめんなさい。貴方……誰?」


ーーーこの優しい人が誰なのか分からない。

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