第5話:教室の秘密と新たなライバル

 火曜日。




 2年A組の教室では、朝のホームルームが終わり、生徒たちがざわつき始めていた。




 春の陽光が窓から差し込み、机の上に柔らかな光を投げかける中、悠斗は鼻を動かして異変に気づいた。




 教室の空気に、微かな汗とインクの匂いが混ざっている。




 さらに、どこか甘くスパイシーな香りが漂い、普段の教室とは異なる雰囲気を放っていた。




「これは…汗とインク、それにスパイシーな香水。誰かが何か隠してる」




 悠斗が教室を見回すと、後ろの席で転校生の森本玲奈が静かに本を読んでいた。




 彼女は昨日転校してきたばかりで、長めのポニーテールと鋭い目つきが印象的だった。




 彼女の周りから漂うスパイシーな香水が、汗と混ざって独特の魅力を放っている。




 悠斗が近づくと、玲奈が顔を上げ、冷ややかな声で言った。




「何? 私の匂いでも嗅いでるの?」




「いや、その…教室に変な匂いがしてて、気になっただけ」




 玲奈は鼻で笑い、




「鼻がいいって噂は本当みたいね」




 と呟いた。




 その瞬間、彼女が本を閉じた拍子にスカートが少しめくれ、白い膝がチラリと見えた。




 悠斗は慌てて目を逸らし、心臓がドキリと鳴った。




 その日の昼休み、教室の机に落書きがされているのが見つかった。




 インクの匂いが強く、悠斗は玲奈の香水と一致することに気づく。彼女を問い詰めると、意外な事実が判明した。




「私がやったんじゃないわ。転校初日に誰かが私の机に落書きしてて、消そうとしただけ」




 玲奈の汗ばんだ首筋から漂うスパイシーな香りに、悠斗は彼女の誠実さを感じた。




 結局、犯人は別の生徒で、玲奈への嫌がらせだったことが分かった。




 事件解決後、玲奈が悠斗に近づいてきた。




「あなた、意外と使えるのね。私の匂い、どう思う?」




「スパイシーで、少し汗が混ざると温かくなる。強いけど優しい感じだよ」




 玲奈は微笑み、「悪くない答えね」と呟いた。花梨が「また女の子増えた!」と拗ねる中、新たなライバルの登場に、悠斗の青春はさらに賑やかになっていった。


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