第3話

使いすぎで穴だらけの白いタンクトップ。


黄朽葉色でこれまたボロボロの煤けた膝丈のハーフパンツ。


既に限界を突破したと窺える鼻緒の取れかかった長草履。



恰好も凡人の其れから逸脱したものであることに違いないけれど、極めつけはその面構え。


白髪はぼうぼうだし前歯なんて半分くらいが金歯や銀歯で、ニイと笑えば虫すらも飛んでいきそうな、そんな感じ。




わたしも最初はちょっと引いた。だって、関わったら何か呪われそうだと思ったから……。





そんな風貌的な理由で初見さんからは敬遠されがちなアケタじいさんだけれど、すっかり馴染みのある御近所さんからの評判は頗る良い。


それは釣りの腕がぴか一だからとか、ここら一帯で一番のお金持ちだからとかそういう理由じゃない。


先のふたつも勿論アケタじいさんの周りに人が溢れる要因だろうと思う。けれど、こういった山奥の村落では特段そういった下心を滲ませる人は多くない。





アケタじいさんの魅力は、爺さんと関わったことのある人間しか知り得ないこと。


だって、ほら。私だって今ここで説明しろ、なんて言われても言葉に詰まるし。









「アケタじいさーん!居ないのー!?」









最後の足掻きのつもりで声を張り上げ、もう一度。


爺さんに野菜を渡したいからという本心もあったけれど、数十分にも及んだ散策を意味のあるものにしておきたいってのが本音だったんだろ、……と言われれば強ち否定できない。




だって、茹だるような暑さの中直ぐ様踵を返さなきゃならないなんて嫌だ。


此処からおばあちゃんちに戻る前に水分補給だけでもしていきたいなあ、なんて。


立ち竦むだけで流れ落ちてゆく汗を荒っぽく腕で拭った。

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