世界最強のおっさん、15歳の頃に戻る 〜さらなる最強を目指して、現代ダンジョンを無双します〜

志鷹 志紀

第1章 人生のやり直しと中学生編

第1話 無様な末路

「……どうして、こうなった」


 口から血を吐き出しながら、そう呟く。

 下半身と右腕を失い、流血がおびただしい。

 俺はもうじき、死ぬのだろう。


 どうして、こうなったのだろうか。

 いや、理由はわかりきっている。

 目の前の怪物に敗北してしまったこと、それが今の無惨な結末を招いたのだ。


「グハハハハ!! 無様だなァ!!」


 瀕死の俺を眺めながら、怪物は笑う。

 ゲラゲラと、さぞかし楽しそうにわらう。

 無様な俺のことを、面白がるように嘲笑あざわらう。


「……悔しいな、ゾグアス。何もかもが……通じないなんてな……」


 目の前の怪物、ゾグアスに告げる。

 俺はゾグアスを倒す為、このダンジョンに潜った。そして道中の数々の魔物を倒し、何とかゾグアスの元へと辿り着いたのだ。


 だが……全ては無駄だった。

 俺が身につけた全ての技術が、魔法が、何もかもがゾグアスには通じなかった。


 その結果が、この惨状だ。

 右腕を千切られ、下半身を切断され。

 動くこともままならず、ゾグアスに嘲笑される始末だ。ゾグアスの言う通り、無様だな。


「人類最強のSS級能力者と聞いて、期待したのだがな。まさかこの程度とは、心底残念だ」


「……お前が強すぎるんだよ」


 今から6年前、俺は覚醒した。

 最強のスキル、【氷炎の魔王レイス・ローア】を得たのだ。さらに人類史上最大の魔力に加え、スキルに耐えうる屈強な肉体も手に入れたのだ。


 当時の俺はしがない30歳フリーターだったが、スキルが覚醒したことで生活が一変した。


 スキルが覚醒した者、通称『能力者』は莫大な財を得る傾向がある。ダンジョン攻略という、非能力者では出来ない仕事ができる為だ。


 俺もその例に漏れず、莫大な財を得た。

 月収10万にも満たない底辺フリーターだった俺が、覚醒してからたった6年で月収100億円を超えるようになったのだ。


 全てが順風満帆だった。

 富、名声、力。この世の全てに手が届いた。

 あの日・・・が訪れるまでは、俺の人生は薔薇色だった。全て上手くいっていたのだ。


「10日前にお前が現れるまでは……全てが上手くいっていたんだ……!!」


 これは、今から10日前の話だ。

 苦谷駅のワン公像前に、突如としてゾグアスが出現した。本当に唐突に、出現したのだ。


 出現したゾグアスは、風景を一望した後に指を鳴らした。刹那、凄まじい爆発が起こり……関東平野が消滅した。


 その後、ゾグアスは空を飛び、どこかに飛び去った。そして数分後には、500の島と50の国が消滅していた。


 ゾグアスはその後も世界を破壊し尽くして、最終的には自分でダンジョンを形成してそこに潜った。まるで破壊活動が飽きたかのように。


「お前が世界を滅ぼさなければ、生き残った人類は『打倒ゾグアス』を掲げなかっただろう。俺が人類の希望と崇められることも、こうしてダンジョンに潜ることもなかっただろう!!」


 血を吐き、ありったけの怒りをぶつける。

 どうせ、俺は死ぬ。だったら最期くらい、怒りをぶち撒けさせてくれ。


「黙って死ね。悲しまなくともお前が死んだ後に、全人類も送ってやるさ」


 ゾグアスの剣が迫る。

 あぁ、俺は死ぬのか。

 本当の本当に、死ぬのだな。


 思えば、散々な人生だった。

 5歳の時、両親が死んだ。

 7歳の時、弟が死んだ。

 12歳の時、育ててくれた祖父が死んだ。

 15歳の時、ひどいイジメを受けた。


「……叶うならば、もう一度──」


 剣が俺の身体を両断する。

 2031年4月13日、俺は死んだ。

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