都市伝説「アノヨロシ駅のマスクおばさん(+少女)」

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 リアルホラーな香りを、知って、死って…。MさんがK君に語った、「アノヨロシ駅の都市伝説話」とは何か?

 「アノヨロシ駅の都市伝説」

 電車に乗っていると、マスク姿で席に座り込み、ゴホンゴホンとせきこんでいる人を見かける。

 わざとマスク姿をしてせきこむ人がいるけれど、なぜそうするかわかりますか?

 理由は…。

 それでは、「アノヨロシ駅の都市伝説」話をはじめよう。 

 ただし…。

 本名では書けない。

 この都市伝説の詳細をある方に聞いてしまったのは、 K君(仮名)。

 まずは、ネットの情報より。

 ある日彼は、ネットの掲示板で、悪霊「ゴホンゴホンおばさん」にまつわるアノヨロシ駅の都市伝説を知ってしまう。

 悪霊は、外見はゴージャスに輝くが、中身はよごれているのが特徴らしい。

知り合いの、都市伝説に詳しい Mさん(仮名)という女性に連絡。

 「もちろん、知っています」

 彼女は、何度も見ているという。

 喫茶店で会い、この方に詳しい話をしてもらえることになった。

 「 K君(仮名)?」

 「はい」

 「私が、悪霊と会ってしまったのは…」

 「はい」

 「アノヨロシ駅から出る電車の中でした」

 「…」

 「あの悪霊は、まちがいなくバブルさん」

 「?」

 満員電車は、都市伝説の香り。

 そもそも、満員電車に乗り込むと、人がぎゅうぎゅう詰めで座る場所が見当たらないことが多くなる。

 異世界が見えてしまうのは、そういうときだ。

 「ゴホン、ゴホン」

 悪霊は、いつもマスク姿で、わざとらしくせきをして席に座るおばさん。

 「あの、自分たちだけ良い思いをして消えていく、日本つぶしの勝ち逃げ生物…。お荷物…」

 「それが、バブルさんなんですね?」

 不幸なことだ。

 弱い立場のだれかを思いやるという言葉の意味すら理解できていない生き物に、出会ってしまうとは。

以下、 Mさん(仮名)の体験談が進む。

 「わざとらしく、せきを…。あの悪霊はきっと、こう言いたかったんでしょう」

 「何です、 Mさん(仮名)?」

 「あたし、せきしているんですけれど?見て、わかるでしょう?ですから、座っても良いでしょう?皆さん、マスク姿の私に、席をゆずってください。ウイルスとか、うつされたくはないでしょう?と…」

 「…う」

 無言の圧力。

 おどしじゃないか。

 「そうしてあの悪霊は、まわりににらみをきかせながら、当然のように席を占領していました」

 ここから、都市伝説のレベルが上がる。

 「 K君(仮名)?」

 「はい」

 「私…、その後も、悪霊と仲間を見てしまいました」

 「仲間?」

 「悪霊の座る横には、いつも同じ女の子が座り込んでいたのです」

 「いつも同じ女の子?」

 「ええ。ルッキズム(外見で人を判断すること)になりますけれど、背格好や服から見て、高校生だったと思います」

その子は、何者?



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