prologue

第1話

たくさんの人でごった返すこの場所。スーツを着ている男だったり、家族連れだったりと様々だが。



そんな場所────空港を、1人颯爽と歩く女がいた。



大きめのキャリーケースをゴロゴロと引き、胸元くらいまであるサラサラの黒髪。サングラスを着けていて、誰もを惹きつける。



スキニーを履いているその足はとても細くて長く、モデルと言われたら通用するようなスタイルだった。





「(……うざい)」





男も女も、彼女とすれ違うたびに誰もが振り返り、彼女の美しい姿に釘づけになる。



サングラスで顔は隠れているものの、彼女の美しさは隠せない。



彼女は周りからの視線に苛々して、少し早足で歩き続ける。



たまに話しかける男がいたものの、全てガン無視。まるで何も聞こえていないかのように、ただ真っ直ぐ前を向いて歩き続けた。



空港の外に出て、彼女は小さく溜め息をつく。それは安堵のもの。





「(帰ってきたんだ……)」





少し目を細めて辺りを見回すものの、10年ぶりくらいのこの場所は随分と変わっていた。





「(変わらないものなんてない、か……)」

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