私達は永遠じゃないから

@kazashi

第1話 せめて綺麗に生きたい

人生は続く。

たとえたいせつなものをうしなっても、空はまた晴れる。

人生は、私が死ぬその日まで終わらない。

たとえもう前を向けないと思っても、だんだん空が明るくなり、太陽が照ってくる。


ひとは死んだとき、なにを残せるのだろう。

愛し愛されて生きたという、あたたかな記憶。

喧嘩したり傷つけ合ったりした、苦い記憶。

美味しい食事を分け合って食べた、優しい記憶。

雨が降る日にあなただけ濡れ、私ひとりだけ傘をさしていた、胸の奥が痛む記憶。


私達は、愛されて生まれてきた。ひとを愛することを覚え、愛し愛されて生きていく。

そんな美しい話ばっかりじゃない。

こどもに手を上げる親。

配偶者をきつい言葉で縛るひと。

「あなたには生きる価値がない」と、厳しい態度を投げるひと。


今日も世界の何処かでは、ミサイルの雨が降る。

今日も世界の片隅では、光を照らされないひとたちがいる。

今日も暗い家で、ひとりで冷めたご飯を流し込むひとたちがいる。

今日も暴走した車は誰かを轢き殺してしまう。


いつ終わるかわからない人生。

いつ粉々になってしまうかわからない人生。


だからこそ、せめて綺麗に生きていきたいんだ。

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