#04 新人育成(4/7)

 次の日。……というか、昼か。

 深夜に任務を終え、家に帰った後はひたすら寝ていた。

 アンジェラはもう出かけているのか、気配は無い。


「……あんま寝過ぎも良くねえし、起きるか」


 洗面所で顔を洗い、着替えた。

 飯は──うん、外で食おう。




 家の鍵を閉め、街へ繰り出す。

 流石に昼となると、どこも人で溢れている。


「おっ! ガイウスさん、一つどうだい?」


「おお。んじゃ、もらおうかな」


「あいよっ! ……はい、お代は丁度っと。またよろしく!」


「うーい」


 適当な屋台で買ったサンドイッチを頬張りながら、市場を歩く。

 観光客や親子連れ、恋人などなど。

 色んな奴らが、色んな顔で買い物をして、のんびり歩いていた。


 サンドイッチを片手に、港の方までぶらつく。

 海の匂いに、屋台の香ばしい匂いまで混ざってきやがる。

 そりゃあ、腹の虫もまた騒ぐってもんだ。


(流石にこれっぽっちじゃ、全然足りねえな。どっかで、定食でも──うげ)


 腰の魔晶端末が、震えた。

 ……んだよ、人使いの荒い奴らだな。

 まあいい。話を聞くがてら、ギルドで出前でも頼むとするか。


 なんだかんだで、便宜を図ってもらってる。

 持ちつ持たれつってのは大事だ。

 良い子の諸君、覚えとけよ?  


 すっかり休み気分だったが、しゃーねえ。

 はいはい、今行きますよっと。




 ギルドに着くと、いつもの顔ぶれがいた。

 昼間ともなれば、依頼掲示板の前はかなりの人だかりになる。 

 

 今日の受付嬢はルティナ。だが他の冒険者に対応中。

 カウンターの奥にいる職員に、声を掛けた。


「よお。呼び出されて来たんだが、腹が減ってる。出前、頼めるか?」


「本当は、職員専用なんですけど……。ガイウスさんなら、いいのかな? ちょっと待ってて下さい」


 出前のメニュー表をカウンターで受け取り、チェックする。


(……焼き魚定食と、タコのトマト煮。これでいいか)


 希望のメニューを職員に伝え、二階へ上がった。

 ギルド長室の前でノックする。


「……ガイウスか。入れ」


「よっ。悪いが、出前を頼んだ。届いたら、ここで食わせてもらうぜ」


「ま、それくらいはいいさ」


 ソファにどっかりと腰を下ろし、ブランツに尋ねた。


「それで、どんな話だ?」


「簡単な話だ。お前に、初心者パーティの育成を頼みたい」


「……一応聞くが、昨日助けた奴じゃねえよな? その、一人になっちまったし」


「ああ、別のパーティだ。お前が昨日助けた冒険者……ソーニャは、落ち着いたら田舎に帰るそうだ」


「へえ、そうか。……まあ、それがいいだろうな」


 あんなことがあったら、もう冒険者は無理だろう。

 田舎で家の仕事でも手伝って、静かに暮らすのが一番だ。


「そのパーティは今朝ギルドに来て、育成希望の書類を出してきた。元々、訓練を受けながらダンジョンに挑むつもりだったらしい」


「いいね。そういう慎重な奴らは長生きする。……だがなあ、ブランツ。別に俺じゃなくてもいいんじゃねえか?」


「お前の娘が見てたらしいぞ。じゃあ父さんを紹介してあげる──って、受付で言ってたそうだ。書類によると、田舎から来た四人組らしい」


「……なーるほど」


 社会貢献してきなさいと、娘からのお達しだ。

 ソファにもたれかかりながら、頭をかく。


 ──あいつなりに、少しでも俺の評判を良くしようってか。


「ボランティアみたいなもんだから、報酬は期待するな。……受けるか?」


「娘の手前、断れねえよなあ……。で、肝心のそいつらは?」


「確か、すぐ近くの酒場だったかな。『バルカ・ルッサ』って店で待ってるとさ」


「……ああ! あの赤い看板の店か。昔は女将がやたら強くて、酔っ払いぶん投げてたな……まだやってんのか、あそこ」


「女将は娘に代替わりしたが、腕っぷしは変わらんそうだ」


「へえ……まあ客としても、ノリが変わらないってのは通いやすいだろうな」


  丁度その時、ドアがノックされる。


「失礼します! 出前、お届けにあがりましたー!」


「おう、あんがとさん」


 代金を支払い、早速食べ始める。

 おおっ、美味いじゃないか。

 焼き魚の塩加減は絶妙だし、タコのトマト煮も酸味とスパイスのバランスがいい。


 ……うん、これは当たりだな!

 後で、どこの店か聞いておこう。

 あっという間に平らげて、立ち上がる。


「んじゃ、ちょっと行ってくらあ。 食器、ここ置いとくぜ」


「ああ。……くれぐれも、丁寧な指導を頼むぞ」


「わーってるよ。俺なりに実践的な指導ってやつを、な」






==========

だてぃばよもやま!


ガイウスはダンジョンに潜る時、依頼の時は基本ソロ。

理由はパーティを組むと拘束時間が増え、娘との時間が減るから。


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