第3話 試練の先に見えた新たな力!歌声で広がる未来

リリィたちは、最初の試練を乗り越えた後もまだ興奮が冷めず、ステージの上でしばらく互いに笑い合い、喜びを分かち合っていた。魔物が消えた後、空に浮かんでいた音符が消えていくのを見つめながら、リリィは心の中で確信していた。


「私たち、本当にできるんだ。」


その瞬間、空気が一変した。すっと耳を澄ますと、遠くから微かに響いてくる音楽のような、でもどこか不安定な旋律が聞こえてきた。リリィは耳を澄ませ、周囲を見渡す。


「これは…?」


ユリが震える声で言った。「なんか、遠くで音楽が聞こえるけど…」


リリィはうなずいた。「あれは…試練かも。」


精霊の姿が再び現れると、その顔には少し真剣な表情が浮かんでいた。


「君たち、次の試練だ。今回は、歌声によって世界に変化をもたらさなければならない。」


リリィたちは一瞬、言葉を飲み込んだ。魔法の歌で魔物を倒したのは感動的だったが、今度の試練はどうやらそれ以上に大きな挑戦のようだ。


「歌声で…世界に変化?」サラが戸惑いながら尋ねた。


精霊は少し間を置き、深刻な口調で続けた。「この世界には『歌の力』が浸透しており、その力を引き出せる者が強大な影響を与える。しかし、今、遠くの街が危機に瀕している。そこでは、長い間続いていた干ばつによって人々が苦しんでいる。その状況を変えるには、君たちの歌が必要だ。」


リリィたちは、無意識にその言葉に引き込まれるような感覚を覚えた。


「干ばつが続いている街に…私たちの歌が?」エリスが自信なさげに言うと、精霊は優しく微笑んだ。


「君たちの歌声が、どんな状況も打破する力を持つ。しかし、君たちの心が一つでなければ、その力は発揮できない。歌うことによって、この街の運命を変えることができるだろう。」


「じゃあ、行こう!」ユリが元気よく立ち上がり、みんなも続けて立ち上がった。


「行こう!」リリィがみんなを見渡し、力強く言った。「私たちの歌で、必ず人々に希望を届けるんだ。」


そして、リリィたちはその場を離れ、精霊の導きに従い、干ばつに苦しむ街へと向かうことに決めた。

 


・・・・・・。




数時間後、リリィたちは広大な砂漠地帯に近づいていた。風は冷たく、乾いた土の匂いが鼻をつく。目の前に広がる街は、かつて栄えていたと思われるが、今はひっそりと静まり返っている。遠くから見ても、街の周りにはまるで何年も雨が降っていないかのように、枯れた木々やひび割れた道路が見える。


「これが…街?」ナナが不安そうに口を開く。


リリィは少し肩をすくめ、頷いた。「はい…でも、私たちの歌で、きっと何とかできる。」


街の中心にある広場に到着すると、そこには何人かの人々が集まっていた。彼らの顔はみんな疲れきっていて、希望の光が見えない。リリィたちはその光景を目の当たりにし、胸が痛むのを感じた。


精霊の声がリリィたちの耳に届く。「君たちの歌声で、この街の運命が変わる。心を一つにして、歌い始めなさい。」


リリィたちは、互いに視線を交わし、決意を新たにした。次の瞬間、全員が一歩前に出て、広場の中心に集まった。


「みんな、私たちが歌うよ!」リリィが声を張り上げると、仲間たちもそれぞれ頷いた。ユリは軽やかにダンスのステップを踏み、サラは優しいハーモニーで支え、ナナはリズムを刻み、エリスはその旋律をさらに深く包み込む。


そして、リリィが最初に声を出した。


「空が涙を流し、乾いた大地に…」


その瞬間、風が急に吹き始め、周囲の空気が震えた。リリィたちの歌声がひとつになり、街全体に響き渡る。だが、それと同時に、何か不安定なものを感じ取る。空に浮かぶ音符が歪み始め、その音符が不規則に弾け飛び、突然、街の上空に黒い雲が集まり始めた。


「これは…?」ユリが驚きの声を上げた。


「歌が…反応している。でも、どうして?」サラが不安げに言う。


精霊の声が再び響く。「君たちの歌声は強力だ。だが、この世界の邪悪な力もまた、歌に反応している。それを打ち消さなければならない。」


リリィは一瞬迷ったが、すぐに気を取り直した。「もう一度、心を一つに!」


リリィたちは再び心をひとつにして歌い始める。今度は、歌声が一層力強く、清らかに広がっていく。すると、黒い雲が一気に消え、空が晴れ渡り、干ばつが続いていた土地に、突然雨が降り注ぎ始めた。


人々は驚き、そして歓声を上げた。水が街に降り注ぎ、乾ききっていた地面が潤っていく。その瞬間、リリィたちの歌声が真の魔法となって、まるで大地が呼吸を始めるかのように、命が宿った。


「やった…!」ナナが涙を浮かべて叫んだ。


「私たち…できたんだ。」エリスが涙をこらえながら言った。


精霊の声が穏やかに響く。「君たちの歌が、世界を変えた。これが君たちの力だ。」


リリィたちは、深く息をついて、互いに顔を見合わせて微笑んだ。歌声がもたらした奇跡を感じながら、彼女たちの心には確かな手ごたえが残っていた。


「これからも、もっともっと歌い続けよう!」リリィが力強く宣言する。


「私たちの歌が、みんなを幸せにするんだ!」ユリが明るく答えた。

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