## パート6: 月光を纏う盾:ぷるなの応用訓練

ゴビーの戦闘訓練が目覚ましい成果を上げる一方、僕はぷるなの能力――液状化とその応用――の強化にも力を注いでいた。彼女の力は、使い方次第でゴビーの機動力とはまた違った、僕たちの切り札になり得るはずだ。


課題はまず、あの暗闇。松明だけでは心許ない。

「ぷるな、君の体の一部を、ほんのり光らせることってできないかな? 暗い場所でも、目印になるような感じで」

「ひ、光る……?」ぷるなは不思議そうに自分の手を見つめる。「わかんない……でも、やってみる」

彼女は集中し、腕の一部を液状化させてみる。しかし、色はいつもの半透明な水色のままで、光を放つ気配はない。何度か試しても結果は同じだった。


(やはり無理か……? いや、待てよ)

僕はふと、資料室で読んだ月光銀の記述を思い出した。「月の光を浴びて輝く性質を持つ」。そして、情報収集の際に、わずかながらサンプルとして手に入れていた月光銀の小さな欠片(鉱石クズのようなものだ)を取り出した。


「ぷるな、ちょっとこれに触れながら、もう一度やってみてくれないか?」

「……これ?」

ぷるなは不思議そうに、銀色に鈍く光る欠片を受け取り、それを握りしめながら、再び腕の液状化を試みた。すると――


「あっ!」

ぷるな自身が驚きの声を上げた。彼女の液状化した腕が、内側からぼんやりと、だが確かに、淡い月光のような青白い光を放ち始めたのだ!

「光った……! 本当に光ったぞ!」

「きれい……ぷる……」

ぷるなも自分の腕から放たれる優しい光に見とれている。


(月光銀に反応しているのか……! これは使える!)

目印としてだけでなく、魔物の注意を引いたり、あるいは狭い範囲を照らす補助光源としても活用できるかもしれない。大きな発見だった。


次に、敵の拘束力の強化だ。

「ぷるな、前のゴブリン戦みたいに、地面をドロドロにするだけじゃなく、もっとネバネバにして、敵が簡単には抜け出せないようにできないか?」

「ねばねば……?」

「あるいは、鞭みたいに伸ばして、敵に絡みつかせるとか」

これは高度な制御と形状変化が必要になる。ぷるなは顔をしかめながらも、僕の指示に従って訓練を始めた。

地面に突き立てた木の棒を敵に見立て、粘着性を高めた粘液を放つ練習。あるいは、液状化した腕を鞭のようにしならせ、棒に巻きつける練習。

失敗も多かった。粘性が強すぎて自分までくっつきそうになったり、鞭が途中で千切れてしまったり。そして、この種の能力は精神的な集中力をかなり使うらしく、ぷるなはすぐに疲れてしまう。

「はぁ……はぁ……むずかしい……」

「無理はするな、ぷるな。休憩しよう」

僕は彼女の消耗が激しいことに気づき、こまめに休憩を挟むようにした。彼女の精神的な負担にも気を配らなければ。


最後に、ゴビーとの連携を想定した、移動補助の訓練だ。

「ゴビーが壁を走る時、足場が悪い場所もあると思うんだ。そういう時に、ぷるなが壁に一時的な足場を作ってあげられないかな?」

「あしば……?」

「ああ。粘液を壁にくっつけて、短時間だけ固まらせるんだ。ゴビーが跳び移れるくらいの大きさでいい」

これは、形状維持と硬度変化という、さらに高度な技術だ。ぷるなは首を傾げながらも、空き地の壁に向かって挑戦する。

最初はただ粘液が壁を伝って流れ落ちるだけだったが、何度も試すうちに、ほんの一瞬だけ、壁にゼリー状の塊が付着し、形を保つことができるようになってきた。まだ実用レベルには程遠いが、可能性は感じられる。


この一連の訓練を通じて、僕はぷるなの能力の特性をさらに理解し始めていた。彼女の力は、月光や銀といった要素に親和性があるらしいこと。そして、その制御には、彼女自身の精神状態――集中力や、あるいは「守りたい」というような感情――が大きく影響すること。


「ぷるな、本当にすごいぞ。どんどん新しいことができるようになってる」

訓練の合間に、僕は彼女の頭を撫でながら言った。

「……ほんと? よーすけの、やくにたってる?」

「ああ、もちろんだ。ぷるなは、俺たちの希望の光だよ」

僕の言葉に、ぷるなは満面の笑みを浮かべた。その笑顔が、彼女の力をさらに引き出す源になるのかもしれない。


ゴビーの強化された機動力と奇襲能力。そして、ぷるなの多様な応用可能性を秘めた液状化能力。それぞれの個性が、僕の指示によって一つの力となる。チームとしての形が、より鮮明に見えてきた気がした。

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