エピソード13 —隠し事—

 「今、何て言った?」

レイヴァンの声が低くなる。
カレンはハッと息を呑み、目を泳がせた。


 「え、えっと……」

 ぎこちなく笑みを浮かべるカレンだったが、その態度が余計に怪しさを増す。
レイヴァンはスプーンを置き、ゆっくりと身を乗り出した。


 「お前……俺が異世界から来たことを、どうして知ってる?」


 カレンの肩がピクリと動く。
だが、彼女は答えない。


 レイヴァンはさらに一歩踏み込む。
 気が付けば、カレンとの距離はほんの数センチ。


 「——ッ!」

 カレンの顔が一気に赤く染まる。
レイヴァンは真剣な眼差しで彼女を見つめていたが、ふとカレンの表情に違和感を覚えた。


 (……なんでこいつ、そんな顔してんだ?)


 その時だった。


 「おいおい、朝から随分お熱いじゃないか」

 突然、野太い声が響き、二人はハッとする。


 おじさんが大きなあくびをしながら部屋の奥から現れた。


 「まあ若いもん同士、仲がいいのは結構なことだがな……まずは朝食をちゃんと食べてからにしたらどうだ?」


 おじさんの言葉に、レイヴァンはようやく自分の状況を理解した。
——カレンと、顔が近すぎる。


 「っ……!」

 レイヴァンはバッと距離を取る。
カレンも慌てて身を引いたが、頬の赤みは消えない。
むしろ、いつもより早く動く心臓の音を感じていた。


 「え、えっと! さ、さあ! 早く食べて、準備しましょう!」


 カレンは早口で言いながら、食器を片付け始める。
レイヴァンは無言でスープを飲み込みながら、ぼんやりと考えていた。


 (……何だったんだ、今の)

カレンの反応が気にかかる。



 でも今は、それを深く考えるよりも——


 「……街に出る準備をするか」

いずれカレンから話してくれる日がくるだろう


 レイヴァンは、残りの朝食に手を伸ばした。

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転生したら元々その世界の住民でした。 みっきり @mikkiri

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