エピソード12 —決意—

 目を覚ますと、木造の天井が視界に入った。



 昨夜の出来事を思い返し、レイヴァンはゆっくりと身を起こす。


――異世界に来たこと。


――カレンという少女に助けられたこと。


――そして、カレンがおじさんと呼ぶ男。


 自分を知っているような口ぶりだったが、多くは語らなかった。
 レイヴァンは軽く頭を振り、掛け布団をどける。


 「……さて」


 少しでも情報を集める必要がある。
現代の記憶はあっても、この世界のことは何もわからないのだから。


 立ち上がると、昨夜おじさんから渡された服が目に入った。



 「これ、明らかに小さいような——」

受け取った服は明らかに大人が着る大きさではなかった


 レイヴァンは部屋の隅に置かれていた鏡で

服を自分の体にあててみた。


「え......?」


そこには子供の姿の自分が写っていた。体に当てた服は、少し小さくは感じたが十分着れそうだった。



 「え、俺......幼くなってる」


レイヴァンは頭の中がパニックになっていた。

昨日はバタバタしていて自分の体のことなんて気付かなかった、それに違和感さえ抱かなかった

 

「おはようございます」


「うわぁッ!」

レイヴァンは驚いて声のする方を見ると、カレンが手招きをしている


 足を運ぶとカレンが小さなテーブルを指さす。


 そこには木製のカップがあり、その横にはパンとスープが並んでいる。


 「……それ、俺のか?」


 「ええ。朝食ですよ」


 カレンが椅子を引き、座るよう促す。
レイヴァンは警戒することもなく、素直に席についた。



 スープをひと口飲むと、体がじんわりと温まる。


 「美味い」

 素直な感想を漏らすと、カレンは驚いたように目を瞬かせた。


 「……あなた、昨日より表情が柔らかいですね」


 「……そうか?」


 「ええ。昨日はずっと無表情だったのに」

 思い返せば、昨日は状況を整理するのに必死で、表情を作る余裕などなかった。
無意識に警戒していたのかもしれない。


 ただ——。

レイヴァンは自分の体をもう一度再確認し、深いため息をついた。


「また新たな悩みが増えたよ」


 カレンは不思議そうに首を傾げながら

「これからどうするつもりですか?」


 「ここのことを知るためにも街を歩く」


 「それなら、私が案内しますよ」


 「いいのか?」


 「もちろん。せっかく異世界から来た人を助けたんですから、最後まで面倒を見ます」


 「……今、何て言った?」

 カレンの何気ない一言に、レイヴァンの手が止まる。



 自分はまだ、この世界に来た経緯を誰にも話していない。



 ではなぜ、彼女は "異世界から来た"

などと――


 レイヴァンはカレンを見つめた。

 (この少女は、一体どこまで俺の事を.....)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る