流星になった二匹

 いよいよ出発の時がやってきた。

 俺は831と一緒にこの星を出ることになった。


 831が俺と一緒の星へ行きたいって言うもんだから、途中で逸れてしまわないように、お互い抱き合って脱出するかたちとなる。


「絶対に離さないでよ?離したら許さないんだからね!」


 いたずらな笑顔でそう言ってくる。

 離さないさ。ただ、この星のエネルギーは凄まじい。エネルギー噴出の勢いに耐えられるかどうかは自信が無かった。途中で意識を失ってしまうかもしれない。

 けれど、831のことだけは離さないようにしよう。そう強く思っていた。


 カクリョを切り離す役目を担うのは、この星ウルリアに残り、ここで一生を終えると決心した者達だ。

 その者達はとても心配そうに俺たちを見てくる。

 大丈夫だ。俺は不安もあるが少しワクワクもしているんだぞ。


 出発直前、俺たちは体内にウルリアのエネルギーをたらふく蓄えた。それによって俺の翼は大きく膨らみ、弾力のあるものとなった。これである程度の衝撃には耐えられるだろうか。

 俺はその膨らんだ翼で、抱き合っている831を包み込んだ。

 絶対に離さないぞ。もしも離してしまったら、どんなお仕置きが待っているか分からないからな。


 俺たちは覚悟を決めた。

 いつ出発しても大丈夫だ。


 しばらくして、今立っている場所が、この星のガスによりとてつもなく巨大な泡となった。

 そして、その泡が弾けた瞬間。


「お元気で!!!」


 カクリョが切り離され、俺たちは勢いよくウルリアから弾き飛ばされた。


 凄まじい勢いだった。俺は必死に831を抱きしめた。831もまた俺に必死にしがみついている。

 ゴオオオオオォという爆音の振動で、全身が震えている。

 しばらくは何も考えることができなかった。目も開けられない。

 ただひたすら勢いに身を任せて、暗い宇宙の中へと放り込まれていった。


 しばらくしてウルリアの大きな音が遠ざかる。


 次第に何も聞こえなくなった。


 聞こえるのは、自分と831の息遣いだけ。


 このままどこへ行くのかわからない。

 辿り着いた星、それが俺たちの第二の故郷となる。

 まぁその星で生きていけるかもわからないんだがな。


 俺は余計なエネルギーは使わないようにと、思考することを一旦やめた。

 どこへ行ったってワクワクだ。


 そのまま俺たちは光の速さの如く、宇宙空間を横断していった。


 ⭐︎⭐︎⭐︎

 

 どれだけの時が経ったのかわからない。

 ただ、蓄えてきたエネルギーが残りわずかになってきて、少し焦りが見え始めた頃だった。


 目の前に、青く輝く、とある星が見えてきた。


 このまま行くと俺たちはその星に上陸することになる。

 やった、やっと俺たちの第二の故郷に辿り着くことができるんだ。


「おい831、見えるか?きっとあれが俺たちの次の星だ。」

「まぁ!なんて美しいの!こんな色初めて見たよ!」


 831は、その美しい光景に目を光り輝かせていた。


 その時ふと、自分たちの周りには、彗星が放出したのであろうチリの粒のようなものが、無数に漂っていることに気がついた。

 そのチリの粒たちは、青い星へと落ちていく途中、眩い光を放ちながら消えてしまっていた。その光景は美しかったが、何か自分たちの想像し得ない現象が起きているのだろうと思い、少し不安になった。


 その不安は的中していて。

 俺たちはその星に落ちていく途中、ものすごい轟音と共に、全身が燃え盛り始めたのだった。

 なんだこの熱は。バリバリと音を立てながら、俺たちの体が爆ぜていく。

 とてつもない摩擦が生じているようだった。


「何これ!熱い!怖い!」


 831が悲鳴をあげていた。


「大丈夫だ!俺に捕まっていろ!」


 俺は自分の大きな翼で831を包み込み、摩擦から守ろうと必死だった。


 しかし、次の瞬間、俺は何か奇妙な声を聞いた。

 どこから聞こえてきたのだろうか。脳内に直接入り込んできたような気もする。


「好きな人と幸せになれますように。」


 そう言っていたと思う。誰なんだ。


 その声に気を取られてしまったからだろうか。俺は831を抱きしめる力を少し緩めてしまった。


 そのせいで、激しい摩擦の衝撃に耐えきれず、俺は831を離してしまった。


「えっ-」


 831が、激しく爆ぜながら、遥か遠くへと飛んでいった。

 どこへ行くんだ。行くな、行かないでくれ。


 その時の831の表情を、俺は忘れることなどできないだろう。俺はどういう表情をしていただろうか。


 俺はただただ後悔と共に、激しく爆ぜながら、そのまま青い星へと落下していったのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る