暁の高まるEmotion【感情】

初夏の風が心地よくて、夜景も綺麗だった。


「さてと・・・・聞きたい事があるけど、

良いか?」

鞠谷は、無意識に緊張した様子だ。


「うん。」

私は、座って膝を抱えた腕に力を入れる。


「手紙は、読ませてもらった。

言いたい事は、分かったつもりだ。

その上で、言うけど、

俺が、今日尋ねて来なかったら、

どうしていた?

待っているだけでは、ダメだって、

俺は、何度も、言っていたよな?」


こんな言い方をすると、

鞠谷を泣かせてしまう事は、解かっている。


だけど、

このまま、ズルズル行く訳にはいかない。


だから、今日は泣かせても、

鞠谷の本心を言わせるつもりだ。

あの時の、俺の結論を、

鞠谷が、理解していないなら、

こんな関係は無意味になってしまう。


こんなに、長くなるつもりは、

当時、無かったけど、

この事を長かった喧嘩で、仲直りするには、

俺も、鞠谷も、お互いを、曝け出さないと、

ダメだと、今は、信じている。


あの頃の俺達に足りなかったのは、

それだと思う。

俺は、鞠谷を解かったつもりでいた。

アイツの不安や、寂しさも、

十分に、理解していたつもりだった。


だけど、俺は、

自分の気持ちを伝え、足り無かったと思う。


そして、アイツは、

俺を信じる気持ちが足りなかった事、

自分に自信を持つ事が、必要だった。


「でも、電話・・・出来無かった。」

私は、下を向いたまま、答えた。


「・・何故?」

俺は、泣いちゃうかな?と、心配した。


何時だったか、

鞠谷が言っていた事を思い起こす。

電話をするのが苦手たって言っていた。


確かに、

電話でのアイツは、緊張しまくって、

声なんかも上擦っている事がよくある。

何で?と、聞いてみた時、

そんな事を言っていた。


今でも、そうなのだろうか?

「苦手だから?仕事でも?」

俺は、少し、優しい口調で聞いてみた。

やっぱり泣かれたくないという気持ちが、

出てきてしまう。


「・・・うん、どっちかというと

・・・仕事で電話したりは出来るけど、

外回りの人に、携帯かけたりとかは、

苦手かな・・」

私は、自分を偽らず、

想いを素直に伝えなければ、

そんな想いを抱きながら答える。


「何故?」

何と無く、分かっていたけど、

俺は、もう一度聞いてみた。


「・・・緊張しちゃうの・・・

電話って、怖いじゃあない?

どうでもいい人はいいけど、

そうじゃあないと、

かえって、ドキドキして、

心臓の音で、

相手が見えなくなるって言うか・・・・」


予想通りの答えだった。

だけど、いい加減に、卒業しろよな・・・

そう言う意味も含めて、

ちょっとキツメに言い放ってみる事にした。

「でも、俺にも、そうなのか?

それって・・・なんか違わねぇか?」


今でも・・・そうなんだな。

そういう所は、

多分、余り、変わらないのかもしれないな。

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