あの夏の青さは、花火のように眩しくて儚い(仮タイトル)

一ノ瀬詩音

あの夏が動き出す

序章 始まりの旋律

夜の静けさとは裏腹に、今年もここは賑やかだ。人々の笑い声、足音、太鼓の響き、気分が上がる音楽。

一つ一つの音が紡ぎ合うことで生まれる一体感。夏だというのに、涼しくするどころか暑さを増すのがこの祭というもの。

何度も来ているはずなのに、高揚感には慣れない。

『お祭りをお楽しみの皆様。これより、一大イベントである花火の打ち上げが始まります。』

どうやら、運営のアナウンスではこの後恒例の花火を打ち上げるようだ。

ここの花火は有名で毎年のように人が集まる。

そろそろかな。

あの場所へと行かなくては。

人混みをかき分け、あの場所へと足を運ぶ。

森の中、茂みという茂みの奥へ。少々疲労感は増すが、いい運動だと思い聞かせ、上へと登る。

数分が経ち、目的地へと着いた。相変わらずここは景色が良い。先程の神社が小さく見え、多くの住宅街の部屋の光がライトアップされたライブ会場かのように場の雰囲気を盛り上げる。

コーラ缶を開け、屋台で買った焼きそばを食べながら花火の打ち上げまで待つ。

この場所は、大切な場所。沢山の思い出と時間が詰まっている。

思い出すと、あの頃の出会いは単なる偶然だったのだろうか。どんな時、どんな場所であっても会うことが可能なくらいの偶然な出来事が多かった。

これを皆は、『運命』とでも呼ぶのだろう。

しかし、そんな単純な言葉ではなく、

『人生』だと今なら思える。

本当に不思議な話である。

そんな思いを馳せているとどうやら花火が上がり始めたようだ。

いつものように…いや、今回はこのアコギを使ってはなしを紡ごう。独り言だから別に形式なんてものはない。

花火と、この1日が終わるまで昔話をしよう。

押しつぶされそうなほどの気持ちが晴れると信じて………。

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