創作のための異世界ファンタジーガイド

雨宮 徹

主人公の描き方・能力設定

■公募向け


・成長重視

 主人公が弱い存在からスタートするからこそ、壁にぶつかり、悩み、成長して乗り越えるという過程を描くことができます。これにより自然と物語に深みが出ます。ストーリーには山と谷がなくてはなりません。一直線に右肩上がりではよくありません。谷を乗り越えて大きな山(成長)に到達するときに読者は感動し、心を揺さぶられるのです。異世界ファンタジーでいえば強敵という壁にぶつかり、乗り越えるために修行し、新たなスキルを手に入れる。このような形で山と谷が作られます。



・内面の葛藤が深い

 主人公がレベルアップするにあたり、悩むシーンが自然と必要になります。「この力を手に入れれば強敵を倒せるが、異種族間の溝が深まる」などの類です。この場合、単に修行すればよいのではなく、いかにして異種族間の仲を維持できるかについても奔走するため、サブエピソードが増えます。これにより、主人公のキャラクターの深堀りを自然にできます。



・目的と動機が明確

 何を目的に異世界を生きるか。これには「滅亡の危機にある母国を救いたい」といった具合に目的があってこそ、成長が必要になります。成長と目的は切っても切り離せない関係です。



・制約付きの能力

 「強いけどデメリットがある」「能力を使うには代償が必要」といったバランス調整が必要。これに伴い「知略」や「工夫」で乗り越える方が評価されやすいです。バランス調整に限らず、「負傷していて全力が出せない状況を頭を使って脱する」という展開もあり得ます。


具体例

「強いけどデメリットがある」

「使うたびに寿命を削る」(王道、緊迫感を生む)

「一度発動したら一定時間、無防備になる」(駆け引きが生まれる)

「強力だが、対象を誤ると味方を巻き込む」(戦略的な葛藤が生じる)



 「知略や工夫で乗り越える」

「能力が使えない状況で、トラップを仕掛けて逆転する」

「敵の弱点を突いて、能力の使用回数を最小限に抑える」




■ネット小説向け



・最初から強い

 書籍とは逆です。爽快感が求められています。ネット小説は隙間時間に読むため、サクッと読めるほうが好まれます。タイパ重視という風潮もあり、「壁にぶつかると、成長過程で時間がかかる」という考えも影響しています。最初から神に祝福されていたり、ゲームのスキルを引き継いでいたりと、「最初から強い」パターンがウケがよいです。ただし、強さをどう活かすか、どう成長するかが描かれることも多いです。


具体例

「最初から強い」

「異世界に転生したら、最初から神の加護MAX」(神の祝福)

「前世のゲームスキルをそのまま引き継ぎ、即レベルカンスト」(ゲーム系)

「最弱スキルに見えた能力が、実は全スキル無制限コピー」(隠れ最強系)



・簡単な目的設定

 ネット小説では、目的がシンプルでわかりやすいことが多いです。例えば「強くなりたい」「ハーレムを作りたい」などが典型的な目標です。最初から強い主人公は、次々と敵を倒し、スキルを得ていくことが多いですが、成長を描く際にも「どう戦うか」「どんな工夫をするか」がポイントとなり、成長が見られる場合もあります。

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