終章 3

 サスは暫時の暇をもらい、シリムと鍛錬を積んだり、街巡りなどをする日々を過ごした。

 中でもローズミル南部、激しい戦闘が行われた跡地では、サスの突き刺したノービットの残骸を中心に霊園が出来ており、サスとシリムは何度か赴いた。かの戦いでは少なくない死者が出ており、その荒涼とした景色を見ると、自分が生きていることがいかに奇跡的なことか、身につまされる思いに駆られた。

 ある日、調査団本部に呼ばれ、シリムと連れたって出かけると、コーストリア、レメ、ムデル、そしてエトラとレオナという顔ぶれが彼らを待っていた。

 まず口火を切ったのはレメだった。

「サス、単刀直入に言う。ルシェからのメッセージが確認された」

「えっ──本当に?」

「です!」と話を継いだのはレオナだった。

「シリムさんの観測結果から実証された対宇宙スケーリング説によって、ワームホールの解析方法を刷新した結果、存続連の制圧したワームホールから、漂流者の出したと思われる電気信号が発見されたんです」

「内容は夥しく破損していて内容は復元できていないらしいがな」

 エトラが腕を組んで言う。コーストリアがサスとシリムを交互に見やった。

「場所はアズヴァ西部。少し遠いが、侵攻にあたって人員の集まったローズミルから隊を組んで、ムデルを頭に調査部隊を派遣することになった」

「うちからはレオナが行く。こいつはコテコテの現場タイプだからな」

 と、エトラが親指でレオナを示す。レオナは元気良く挙手した。

「行きまーす! だから、サスさんもシリムちゃんも行きましょうよ!」

 その呑気さに「ガキのお出かけじゃねえんだぞ」と、あのムデルが呆れている。

「私も連絡係兼臨時戦力として同行するが、他の随員としてムデルがふたりの名を挙げた。どうする?」

 レメの言葉に、思わずムデルを見てしまう。ムデルはつんとそっぽを向いているが、義理は果たしてくれたらしい。

 断る理由などどこにもない。ふたりは揃ってうなずいた。

「もちろん」「行くよ」

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