終章 1

 目が覚めると横で寝息がした。眠ったシリムがすぅすぅと静かに呼吸している。睫毛長いな、と寝起きのぼんやりとした頭で思いつつ、サスは身を起こした。

 すると、腕を掴まれて寝床に引き戻された。不満そうなシリムの顔と対面する。

「どうして無視するの」

「無視って……君は眠ってたじゃないか」

「寝たふりだよ。わたしが眠らないこと知ってるくせに」

「じゃあ、なんで寝たふりを」

「サスなら目が覚めてわたしの寝顔見たら、頭をふわふわ撫でて『ふふ……』って笑ってくれるかなと思って」

「朝から期待が重いな──」

「もう一回やり直してもいいよ?」

「うーん……でも起きちゃったしな……」

「いーーーーーつまでやってんですか!」

 カンカンカンカン、と鍋の底をスプーンで叩きながら、レオナが顔を出した。

「ローズミル出発の日だっていうのに、よく平常運転でやってられますね。とっととご飯食べて、この部屋引き払う準備しますよ!」

 もうその日が来たのか、とサスは茫洋とした気分になる。潜伏派による攻勢から一ヶ月が過ぎていた。

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