第22話 死神の大太刀 弐什弐
五十人以上が転移してその場から居なくなり、洞窟の中には
人が去り、余韻だけが漂う静寂。その中で言葉を発する者はいなかった。
そんな中、静寂を破るように
「さて、早く陣を切ってしまうぞ。
その声で気持ちが切り替わった
皆が淡々と作業をしていく中で、門外漢の
「
「はい。」
「よく分からんのだが。この陣を切るって作業は、結んだ線を断てばそれで済むのではないのか?後学の為に聞いておきたい。」
「私が使用できる技術ではありませんので、話せるのは仮定の範囲です。お聞きになりますか?」
「わかりました。説明させていただきます。私が学び、複数の紋章術師から聞いた情報から理解すると、気の流れを断つ。この言葉に集約されます。」
「ほう、気の流れか。」
「それでは、紋章陣とは何か。そこからお話しします。
「紋章陣の印象?見たままだ。紋章を組み込んだ円。描き込まれる内容で様々な現象を起こす。そんなところだ。理屈までは知らん。」
その姿を見て、
皆が的確に動いている事を確認した
「一般的にはその認識で問題はありません。正確には紋章を組み込んだ陣。そのような考え方になります。陣とは円で結んだ内側を指します。陣の中に描かれた紋章は、同じものでも配置によって意味合いが異なり、それ等の探求は学問と似ている。故に、紋章学と言われることもあります。」
「学問か・・・俺の苦手分野だ。計算はできなけりゃ困るが、歴史を学ぶよりも刀を振る方が性に合っていたからな。過去の偉人の言葉は戦場で守ってはくれない。」
「戦いの中に身を投じる
「そうだろ。」
「ですが、皆に剣術の才があるわけではありません。才の大きさも違う。それでも戦や内乱は起こります。剣術の才が無い者でも戦う術が兵法であり、その延長にあるのが紋章術であると考えれば合点が行くかと。」
「そうか、そんな考え方をするのか。それを踏まえると刀の扱いに長けていない者は紋章術を求めるかもしれんな。だが、紋章術を扱える者はかなり少ないと聞いている。」
「おっしゃる通り紋章を扱うにも才が必要。ですが厳密に申しますと、才が必要なのは紋章陣の起動に関してです。紋章術が学問である以上、その知識は誰にでも共有が可能。それでも、それは陣の構成や展開場所に関して。展開した紋章陣を起動するには龍脈の力を扱う特別な感覚が必要です。」
「特別な感覚ね・・・。」
各地を旅している
それはとある地方に残る秘技、自然に満ちる外気を取り込み肉体強化や物質硬化の反映させる術だ。だが、それは遠い昔の話。伝承者の名は忘れてしまった。代々伝承はされているけれど、何かに記載があるものではなく、口伝でのみ伝えられているのだそう。
その男とは立ち会いでは無く試合として対峙した。瞬間的にではあるが、
紋章術を扱う特別な感覚とは、男が扱った秘技に近いのかもしれない。
「その感覚ってのは外気がうんたらって話になるのか?」
「知っていたのですか?そう、展開した紋章陣を起動させるには、一度体に取り込んだ外気を体の中の気、いわゆる内気を用いて陣へ流し込む必要があります。特別な感覚とは外気を取り込む感覚。そして、内気を扱う感覚の二点。そう解釈すれば間違いないでしょう。」
「そうか。なんにせよ、俺には扱えん技術か・・・。」
少し休憩の時間を設けた。各々が座って支給された僅かな食料を口に運んでいる。その中でも
「今回の作業は紋章陣を切ること。一見すると難しい作業ではありません。ですが、陣を切るとはこの地に刻まれた外気の跡を断つ作業。物理的に陣を壊せば使用はできませんが。半刻もあれば再展開は可能。此度は紋章術師がおりませんで、余計に時間がかかってしまいました。同じ地に紋章陣の再展開は可能ですが、陣が切られた状態からでは長い時間がかかります。それこそ最初に展開した時と同じ時間が必要です。」
「では、この場に
「それにしても、
「紋章術に関しては過去に勉強をしておりましたので。もっとも、私は例の特別な感覚がなかったので、紋章術師にはなれませんでしたが。」
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