第10話 死神の大太刀 什
犬神の祠がある洞窟から出た餓狼は、一度集落へ戻ることにした。命令ではないけれど、頼まれた以上は
山道に入り、獣道を進む。すると、不意に
「尾行は上手いが気配を消せてはいない。忍びとしては修行不足だな。」
槍を携えた男。背はさほど高くない。しかし、纏う雰囲気が只者でないと言っている。現れた男は身形がしっかりしている。先日斬った盗賊達の身形が汚すぎたって話なのだが、それはこの際どうでもいい。
この男は何処に属している。盗賊、それとも
山中で出会った者に天気の話をされたら対応してくれるだろうか?いや、どうだろうか。目の前の男は世間話に付き合ってくれる雰囲気がない。もし盗賊ならばとっ捕まえて何者なのかを吐かせてしまえばいいのだが、狗神家の家臣だったなら・・・それを考えると、ここで迂闊なことはできない。
男の目に
「おいおい、問答無用か。物騒な奴だ。その態度、俺は関心せんな。」
男の足さばきも相まって槍の連撃は速い。よく研鑽されたいい動きだ。それでも、数撃も見れば動きの癖が分かってくるそうなれば、いくら速かろうが攻撃を避けることなど造作もない。
いきなり拍子が変わらない限り、奴の槍が
いつの間にか槍を手放した男が遠間にいる。そして、腰に下げた小太刀の柄に触れた。その動きに呼応して、
それならばと漆黒の大太刀を抜刀。そして、担ぐような構えをとった。
彼等の放つ気に驚いた鳥達が一斉に飛び立つ。
次の瞬間だった。
一気に間合いを詰められ、
無意識下で
体勢を崩した男が後退した。
「避けられた?なかなか腕が立つじゃないか。」
別の男の声。仲間が居たようだ。
「勘さん、この男強い。並の盗賊じゃない。」
勘さんと呼ばれた男が抜刀した。
こいつら俺を盗賊だと思っている?確かに身形は盗賊・・・なのか?まずはこちらから情報を開示すべきだなこれは。
「待て待て、お前達はなにか勘違いをしている。俺は盗賊ではない。」
「ならば、この地に何用で足を踏み入れた。」
後から現れた勘さんの方は話が通じるようだ。だが、刀の切っ先がブレずに
「
「
「確かに。
「だが、あれは
「冷静になれ
「確かにそう・・・。だが、味方のふりをして名乗らせた可能性もある。」
「あいつの顔を見てみろ、そんな狡猾なことを考える者の顔じゃない。どう見たって脳筋の類だろ。そこまで頭が回るとも思えん。」
会話内容は
「そうだな。」
二人が納刀したのを見て、
二人は
「職人達の集落に戻った方がいい。
「盗賊達の残党は?」
「大半は俺が斬ったが、まだ潜伏しているかもしれん。八名が二班周辺を回っている。森が静かって事は、まだ戦闘になっていない。盗賊と遭遇はしていないってことだ。」
「
「集落へ戻る事を職人達に伝えてくる。その間お待ちいただきたい。」
毅然とした態度で告げる
そう考えると、この対応が一番当たり障りがない。
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