第9話 死神の大太刀 玖
妙な感じを受けつつ道なりに進む。すると、大滝の中央に該当する辺りに大きな洞窟があった。
「犬神の祠ってのがあるのはここか。」
洞窟の中の様子を伺う。陽の光が届かない場所ではあるが、洞窟の中は薄い灯りが灯っていた。ロウソクの明かりにしては光が淡すぎる。
岩壁の所々に淡く光る不思議な物があるのが見えた。
「なんだあれは、可燃物・・・ではないな。燃えた後の臭いがない。入って行っても問題はないだろうか。」
洞窟の奥に祠があった。小さな寺院程の大きさ。
洞窟から出ようと踵を返した
「お前か、犬神って奴は。えらく立派な図体をしているじゃないか。
「自惚れるな人間。貴様なんぞ我が相手をすると思っているのか。・・・いや、違う。人の姿は見せかけか。龍の使徒。破壊の化身が我に何の用だ。」
その声が何処から発せられたのかは分からない。
戸惑う
狼の鋭い目が
「まずは名を名乗らんか。貴様が無礼なのは重々理解した。しかし、そんな事でいちいち腹を立てるような我ではない。そもそも、何故に龍の使徒がその首飾りを身につけているのか。それは知る由もないないが、首飾りをしている以上は
犬神が大きな
見た目は獣。だが、話は通じるようだ。話し方も理知的であり、いきなり襲われることもなさそうだ。仮にもこの山の神。この場は礼を重んじた方がいい。
「これは失礼仕った。この祠の主、犬神様とお見受けする。私の名は
「それで、その
「狗神家家臣、
「ご覧の通りだ。不埒者とは近頃この辺に湧いている者共のことか。それなら問題はない。何故なら、奴らならここに近付こうともしない。仮に、この山を荒らすのなら容赦する気はない。だが、我は積極的に人間同士の争いに関わろうとは思わん。」
「承知している。故に、不埒者は人間の手で処理しようかと。その過程で山中で争いを起こすかもしれません。ご容赦願えればと。」
犬神が鼻を鳴らした。
「それも度が過ぎれば我が介入しなければならん。それだけは覚えておけ。」
「理解いただき感謝する。」
そう言った後、軽く頭を下げた
「勘さん、周囲に人の気配はないぞ。」
「そうか。引き続き周囲の警戒を頼む。そろそろ報告を終えた
「くっくっくっ、あの方が言いそうな言葉だ。」
職人達の集落に到着した後、
職人達の無事を確認して、
そもそも
集落の状況を確認し終えた
「先にこの場を退避した方がいい。」
その言葉を受けた
「声は上げないように。まずは俺達がこの場に来ていることを盗賊達が認知していると思って動く。その上で考えると、俺が盗賊の頭ならば、今ある戦力の底上げを目論むだろう。まずは武器の確保。次の標的はこの集落にするだろう。」
「ならば防壁を作るか。いや、数で押されては、こちらの人数では押し返す力はないな。それを考えると、人数を集めた上で、ここに一斉攻撃を仕掛けるのが妥当な判断だろうな。」
「ここの武器は近隣諸国からも高い評価を受けている。自分で使っても良し、他所で売り払っても良し。集落を支配下に置くのも一つの手だ。そこで、策を一つ施そうと思う。まずはこの集落の住民の安全を確保。」
「まずは逃げの一手ですか。そうなると、ここに残った武器は盗賊達にくれてやることになりますな。」
部下の一人が呟く。だが、
「いや、そんなつもりはない。
「ならば、その者達の対処は
「賭けの側面が強いな。分のいい賭けとは言えないだろうな。」
「まずは住民達に事情の説明をして、彼等の意見を求めましょう。」
部下達がすぐに動き始めた。逃げる、ここに留まる、その判断は職人達の意思が決定する。
「俺も一仕事してくる。預かっておいてくれ。これを持っていては動きづらい。」
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