第8話 死神の大太刀 捌
それは決して大げさな表現ではない。至るところが赤黒い染みが張り付き。屍と呼ぶには、些か憚られる破片がそこら中に転がっていた。集落の中で立っている
その佇まいは死神の異名が過剰な表現ではない事を物語っていた。
「餓狼殿・・・。」
布が血の赤に侵食されていく。刀身が漆黒なので、目視で血糊が拭き取れているのかは分からない。切っ先まで拭き取った後、
「集落の捜索を頼む。まだ残党が居るかもしれん、用心なされよ。」
集落の建物は工房も兼ねているのでそれぞれが大きい。しかし、その分数は少ない。それぞれの仕事の邪魔にならないように配慮した配置なのか、集落の建物は一軒一軒が離れている。建物の間には物置小屋や荷馬車が置いてある場所もあり、数人入っても十分身を隠すことができる。
捜索にはさほど時間はかからなかった。各組から報告を受けたが・・・。
「集落の中からは誰も見つける事ができませんでした。」
三組共同じ報告が上がる。
少なくとも
知っている馬が繋がれていた事を考えると、
可能性としては、二人が職人達と共に逃げた。それか、職人達を人質に二人が連れて行かれた。どちらにせよまだ生きている可能性がある。最悪は逃げた先で殺された。
今は最悪は考えないようにしよう。
「次は山の捜索に移る。先に
「それで、
五人を最低限の戦力として捉え、捜索範囲を確保するために同じ人数で三組にした。主な目的としては
その中で餓狼だけが単独で行動をしていた。獣道を慎重に進んでいく。気配を消して息を殺しながら。
「
この辺には祠がある。地域の守り神である犬神を祀ってる。神事の時以外は狗神家の者達も職人や町人達でさえ近付くことはない。本来ならばそこには神官や巫女しか訪れることは許されない場所であるらしい。
「こんな所に野盗が巣食うなんてことがあるのか?」
普段誰も訪れない場所は日陰者には絶好の隠れ場所になる。
そこに入っては神罰が下ると言われていても、無頼漢にとっては下らない神罰なんぞ無いのと同じだ。不慮の事故で命を落とした者がいたとしても、神罰とは結びつけずにアイツは運が無かった、その言葉だけで全てを片付けてしまうだろう。
「本当にこんなので大丈夫なんだろうな。」
そう呟いた
これもこの集落の職人の仕事なんだろうか、中心に赤い宝石を据えた見事な装飾が施されている。後付であろう紐で首飾りの装いになっている。市場に流せばかなりの値がつくのは間違いない。
「このまま売ってしまった方が俺の利益は大きいんじゃないのか?」
悪い考えが頭を過る。しかし、その考えを振り払うように頭を振った。
人の信頼はお金には変えがたい、特に
「確か、犬神の祠があるのは滝の裏側だったか・・・。」
滝壺へ視線を向けると、上から打ち付ける水の流れの裏側に少し隙間があるのが分かる。人がギリギリすれ違える程の細い道がある。
滝壺の裏側付近まで来たが、祠へ続く道からは人の気配を感じない。
「
可能性を潰すと言う意味では自分の働きにも意味がある、
「ここで引き返しても問題はなさそうなものだが、祠の中まで見ておくか。」
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