短編29‐8話 数あるカクヨムな留学生を上回りし!?
帝王Tsuyamasama
短編29‐8話 数あるカクヨムな留学生を上回りし!?
「さあ聞いてくれたまえ! 俺様の輝かしい伝説をなぁ!」
「……なぁバーグさん。これは聞いていいやつなのか?」
「いいと思いますよ~。気に入らなければ、後で後悔させてあげればよいのでは~?」
「バーグさん容赦ないからなー」
給食の時間が終わって休み時間になった今、中庭に集まっているのは、私、
中庭にある横に長い木製のベンチで、左から順番に……元気な
雪蔵くんは、とても元気な男の子。いつも自信に満ちあふれていて、ちょっとうらやましいです。男の子の中では身長が大きめ。
カタリくんは、小説を書くため……? 見つけるため……? 私にはよくわからないけど、大事な目的があって、この学校に来たみたい。地図を読むのが苦手って聞いた。男の子の中では身長が小さめ。
バーグちゃんは、よりお手伝いができる力を身に着けるために、この学校に来たみたい。女の子の中では身長が大きめ。
あと、トリちゃんという鳥もいるはずなのですけど、今この近くにはいないみたい。手先……羽先? が器用。しかもトロフィーを持つくらい力持ち。鳥というかまんまるで、空を呼ぶよりも、転がっているかぴょんぴょん跳ねていることが多い気がする。
「俺様と夜馬嬢との出会いは、小学二年生である! バックギャモン界において天下無双とうたわれたこの俺様が、病魔にむしばまれていたとき、救いの女神として降臨したのが夜馬嬢なのである!」
「なぁ佐奈。この話はあってんのか?」
雪蔵くんの高らかな声が響くのとは対照的に、カタリくんがいかにも疑いの表情で私に聞いてきました。
「雪蔵くんに遊ぼうって誘われた日におうちに行ったら、かぜをひいていたの。いつも元気なのに、布団を被って苦しそうだったから、雪蔵くんのお母さんに、お手伝いしたいです、って言ったの」
「あらあら、佐奈様の言葉を聴かないとちっとも状況がわかりませんねぇ」
男の子って、大げさな表現をする人が多いと思う……気のせいかな。
「夜馬嬢の懸命な介抱によって、命を吹き返した俺様角済雪蔵!
「素直に礼を言えばわかるさ!」
「お礼にバックギャモンボードのキーホルダーをもらったよ。今も家の鍵に付けているよ」
「意外とかわいいところがあるんですね雪蔵様。深い意味はありませんから!」
あ、ここでトリちゃんが羽ばたきながら、私の前にやってきました。女神の降臨じゃなく、トリの降臨。
私が両手を差し出すと、トリちゃんは手の上に納まるように乗ってくれました。やっぱりまんまる。
「人生山あり谷あり。病魔にむしばまれ
それにしても雪蔵くん、今日も元気だね。あんなに両手を広げて。
「なぁバーグさん。つまりどうしたらいいんだ?」
「思いのたけをぶつけてほしいのなら、遠慮なく言えば喜んでくれますね! 言いたい放題言わせてくれるよい機会ですね!」
言いたい放題……は、別に言わなくていいけど……でも、雪蔵くんが、私からなにか言ってほしい、ということだよね。
(何を言えばいいのかな……特にこれまでで、言いたいけど言えていないことなんて……)
私はただ、雪蔵くんと一緒にいると楽しいし、新しい世界が見える感じで、このままここで一緒にいさせてもらえるだけで…………
(一緒に…………)
……うん。実は最近、雪蔵くんと一緒にいる、ということについて、前よりも『もっと一緒にいたいな』って、思うときが増えてきたと思う。
それがなんでなのかはわからないけど……私がこうして座っているだけで、次から次にいろんな言葉と表現で、私に向けて話しかけてくれる雪蔵くん。そんな雪蔵くんに対して、私もなにかお返しをしてあげたい気持ちもある。
(私って、何を雪蔵くんにお返ししてあげられるんだろう)
雪蔵くんは、バックギャモンというボードゲームが好きらしくて。一応私もルールを覚えて、お誘いされたときには戦うけど、私弱いし……でも強くなってほしいとは、言われなくて。
雪蔵くんが、もっと私に求めていることを、知りたいな。
「佐奈様、これはチャンスですよ! 今までたまりにたまった
なんでバーグちゃんは、そんなに目を輝かせているの?
「鬱憤なんて、ないよ。雪蔵くんは、いつも私を楽しませようとしてくれているもの」
「まぁ! こんな回りくどくてわかりにくくて音量調節が利かないセリフに鬱憤がないだなんて! 佐奈様は本当に女神様かもしれませんね! 深い意味はありませんよ!」
「それはないと思う……」
バーグちゃんで二人目です、私を女神様なんて言うの。
「なぁ佐奈は女神ならさー、何言ってもいいんじゃね? バーグさんじゃないけど。言えばわかるさ!」
カタリくんもバーグさんも、私に言いたいことがあるなら言いなさい、と後押ししてくれているみたいだけど……。
(……ぱっと思い浮かばないけど、せっかくの機会だし……)
「遠慮することはない! 俺様と夜馬嬢の仲ではないか!! さあ、清水の舞台から飛び降りるのだ!」
「飛び降りたくはないけど……」
(でも、こういう機会をくれたもの。思っていることを……伝えようっ)
「……雪蔵くん」
「どうした夜馬嬢!」
トリちゃんのもふもふが、手の上から伝わる。
「いつも楽しませてくれて、ありがとう。これからも、仲良くしてね」
言いました。今私が言いたいことは、これかな。
(……あれっ? 時間が止まってる?)
「……うわーバーグさんどうするよ」
「これは重症ですねぇ。変な言い方の雪蔵様も、すべてを許す佐奈様も」
(ゆ、許す?)
少し止まっていたように見えた雪蔵くん。
「……フッ。フハハハハ! ハーーーッハッハッハァ!! なんとも欲のない女神よ! よかろう、これからも天下無双たる俺様の勇姿、見届けたまえ!」
「てかさ。逆に雪蔵はないのか? 佐奈に言いたいこと」
「俺様の言葉を聞かせてやれというのか? いいだろう存分に」
「あの~そういううるさいのじゃなくってー、本心を素直に言えということだと思いますよぉ? カタリはデリカシーがないことが大きな特徴ですからぁ」
「バーグさんに言われたくねー!」
えっ? 私はすでに、充分楽しませてくれていると……思うけど……?
「なにを言うか! うそ偽りのない俺様の言葉は、それすなわち本心そのものである! だれの手を借りることもなく、
力強い握りこぶし。
「だってさバーグさん。よし、そろそろ掃除場所連れてってくれ!」
「カタリの辞書に努力という文字は載っていないのでしょうか。いえ、そもそも辞書なんて重い物持てませんね。それでは佐奈様、雪蔵様、失礼いたします」
「またなー。いけばわかるさ!」
カタリくんとバーグちゃんは、掃除場所へ向かうために、立ち上がって手を振りながらここから離れていきました。トリちゃんも、なぜか一回大きく羽を広げて見せてくれてから、飛ばずにころころ転がっていきました。鳥……なんだよね?
このベンチに残された、私と雪蔵くん。
とりあえず……雪蔵くんを見てみる。
「はっはっは。どうしたね?」
私はとりあえず、首を横に振っておこう。
毎日いつも元気だなぁ、雪蔵くん。
「……して、夜馬嬢!」
そして私を『よまじょう』なんて呼んでくれるの、雪蔵くんだけ。
「今日は~…………部活の後ー…………帰らぬ、か? 共に」
実はお誘いのときだけ、ちょっと口調がゆっくりになる雪蔵くんのこと、ちょっとだけ……かわいいと思っちゃってる。
(ちょっとだけだよ)
「じゃあ、校門の近くで待ち合わせしようね」
「う、うむ。あとできれば、今週の土曜日、遊ぶとか……」
(ごめんなさい、ちょっとじゃなくていっぱいですね)
「帰りながら、何して遊ぶか決めようね」
「うむ。さ、さすが察しがよいな!!」
やっぱり雪蔵くんと一緒にいると、楽しいなぁ。
短編29‐8話 数あるカクヨムな留学生を上回りし!? 帝王Tsuyamasama @TeiohAoyamacho
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