疲れ知らずの男が求めたものとは?

矢斗刃

求めたもの故に・・・嵌められた。

この物語はフィクションです。


その男神林早麟は仕事が速かった。

他の者たちに比べて圧倒的な天下無双スピードで仕事をこなしていく、その速さはまるでダンスを踊っているかのように優雅だった。皆が皆そう言う。

「できる男は違う。」その言葉を体現するような男だった。

眼鏡をくいとあげて戻す仕草がよりできる男を物語っていた。

しかしそのことが原因で早麟の仕事はドンドンと増えて行くのだ。

それはまるでブラック企業に勤めているバリバリ仕事ができる男のようだ。

他の社員や上司なんかが悪乗りしてどこまでやり切るのか見て見たかったという、好奇心もあったようだ。

それが原因か彼神林早麟は不眠症に陥っていた。

皆の前では全然平気そうなポーカーフェイスをしているが、実は身体や心には様々な負担があった。

彼にとってはこの状態はあまり良くない。

会社を休むか、やめることさえ彼は考えた。

しかし根っからの真面目人間の自分が辞めてしまえば、この会社はどうなるのか回るのか?それに他の仕事に就いたとしても同じようなことを繰り返すんじゃないかと考える。

どうすればいい?どうしたらいい?そんなことを毎日考えながら、今までよりもさらに速い時間で仕事をこなすのは彼自身が故だろうか・・・


そして仕事が終わって切り上げてどうすればいいかと考えながら商店街を歩いていると目の前にはゲームセンターがあった。

そこには・・・女の子の抱き枕と書かれた表紙がUFOキャッチャーにおいてありそれを無意識のうちに100円玉を5枚入れて6回プレイすることにしたら自動で表紙がめくりあがる。

「えっ?」と言う声がしたが気のせいだろう。

本来抱き枕が声を発することなどありえない。

UFOキャッチャーの爪を女の子にクリーンヒットさせる。

「ぎゃー。」とか言っているが気のせいだろう。

さらに二回三回とプレイしていく。

「ぐわー、どわー。」と言う声が聞こえるがきっと仕事の疲れで限界を迎えた体が幻聴を聞いているのかもしれない。

そして四回目でなんだか涙を流しているような幻覚まで見えてきた。

「疲れているのか?」と目元をつまみ疲れを取ろうとする。

「いやー。」と拒絶の音がしたがぱぱぱとアームを回転させる技術を披露して気絶まで持っていく。なんだかボケーと魂が抜けているようなものが見えるがきっと気のせいだ。疲れているに違いない。

五回目に穴の角まで持ってくる。

そして六回目で見事穴に落とした。

「ふっ、こんなの俺にとっては朝飯前だ。」そう言う。

「ちょっとまってください。」となぜか店員が呼びに来る。

「?」疲れが原因でもうこの抱き枕で安眠したい一心なのにどうしたんだそう思う。

そして何か書類まで持ってきてそこに判を押す。

これでこの抱き枕は俺のものになったらしい。

さっきまでの反応は嘘のように消えている。もしかしたらこの抱き枕をゲットしたことによって気分が爽快、疲れが吹っ飛んだのかもしれない。


帰宅後眠気に勝てずにすぐに布団を敷き抱き枕を使用し神林早麟。

彼は一瞬のうちに抱き着いて眠りにつくことができたのだった。




























久しぶりに安眠できたと起きた時には布団の上で俺の目が彼女と会う。

「?」と疑問に浮かぶ。この状況はなんだろうか?

きっとまだ疲れているに違いない、この抱き枕を使って再び寝ようとする。

「ちょっと、また寝るんじゃない!」

「はっ?抱き枕が喋っただと!」と驚愕の事実を口にする。

「そうよ!私はUFOキャッチャーで取られた景品として貴方の抱き枕兼。妻になったのだからよろしく!」と何かわけのわからないことを言う。

「はっ?」と思わず口にする。

「だって書いたでしょ?婚姻届けに名前。」

「えっ?あれ、嘘だろう。」

「えっ何知らずに書いたの?」

「だって俺は疲れていたんだ。あれは何かの保証書じゃなかったのか?」

「あれは婚姻届けよ。私は借金の肩にUFOキャッチャーの景品になったの!私を取ったものの抱き枕兼妻になるって言う条件で!あの日取られなかったら私の借金は帳消しで晴れて解放されたのに!」

「どうしてくれるのこの責任は!」

「それは俺が言いたいわ!」二人して喧嘩腰になってワーワー言っている。




























「お隣さん夫婦喧嘩だそうですよ。」

「あらまぁ。いつのまに。」

「この間菓子折りもって店長だか上司だかが挨拶に来て、旦那さんと奥さんの家族も挨拶に来たんですよ。」

「あーそう言えば何日か前にそういうことがあったような?」

「あの時はまだ一緒に住んでなかったようで、昨日から一緒だったんでしょうね。」

「あらそうなの。若いっていいわね。」

「そうですね。」と近所のおばちゃんの話しであった。

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疲れ知らずの男が求めたものとは? 矢斗刃 @ini84dco5lob

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