予想外の終幕
私野仮面
第1話 世界記録
日本マラソンの父と言われた金栗四三(かなくりしそう)は、ストックホルムオリンピックで真夏の中、とにかく懸命に走っていた。しかし、当時のオリンピックは、今のようなしっかりとしたものではなかった。水はなく、ゴールまで少しでもはやく、はやく。しかし、どんなに頑張っても、もう無理だった。バタッ。彼は、みんなを追いかけようとするなか、日射病で倒れてしまった。
既に協議が終わった翌日、彼は、近くの農家に助けてもらって、ベッドに寝ていた。もう、オリンピックは終わっており、金栗は棄権扱いになって、しぶしぶ、日本に帰った。
最悪な結末になってしまったが、その後、多くの後輩、弟子が大会に出場し、嬉しく、もうこれまでだと思っていた。
〈その54年後〉
彼は、またストックホルムオリンピックの中で走っていた。過去のストックホルムオリンピックで棄権の意思をオリンピック委員会に伝えず、すなわち、「競技中に失踪し、行方不明」ということで、現在も走り続けている状態として扱われていたということに気づいたオリンピック委員会が金栗を記念式典にゴールさせることにしたのだ。招待を受けた金栗は、競技場をゆっくり走る。もう、ゴールテープを切る。そして、アナウンスは言う。
「1967日3月21日。日本の金栗、ただいまゴールイン。タイム、54年と8か月6日5時間32分20秒3、これをもって第5回ストックホルムオリンピック大会の全日程を終了します。」
今後も、この記録が破られることはないだろうといわれている。なお、この記録は、マラソン完走最長記録として、ギネス世界記録に認定されている。
※ノンフィクション
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます