海賊・海野カツオと三人の海洋系ヒロインたち
三流木青二斎無一門
第1話
海野カツオは水没した地球で活動する海賊だ。
海賊、と言ってもそれは彼の顔の一つでしかない。
基本的には、海野カツオの仕事は海底に沈む資源のサルベージである。
全ての大陸が沈んで五十年、海底には、多種多様な資源で溢れ返る。
それを回収し、売買をするのが、海野カツオの役割だった。
では、何故、海野カツオが海賊と呼ばれているのか。
「手ェ上げろ海上人ッ!!」
「動いたらブチ殺すぞッ!!」
叫ぶ声。
その声は、海野カツオが所有する船よりも大型だった。
海野カツオはサルベージした資源を船に乗せていた。
殆どが、新品同様に錆びていない剣や鎧が殆どである。
資源を狙い、海賊が海野カツオに近付いたのだ。
海賊たちは、青色の肌をしていた。
首には鰓があり、目が大きい。
指の股の間にはひれがあって、魚に近しい見た目をしている。
シーマンである。
あちら側から流れて来た、亜人種だった。
「荷物、全部寄越せ」
「お前が運ぶんだ、それまでは殺さないでやる」
「急げよ海上人ッ!!呑気に煙草を銜えやがってッ!!」
海野カツオは口に咥えた煙草を指差した。
そして、海賊たちに向けて丁度良いと話し掛ける。
「悪いけど、火、持ってねぇか?」
現状を理解出来ていない様子だった。
地球で作られた銃火器を、海野カツオへと向けるシーマンたち。
「言語通じてんのか!?」
「ぶっ殺すぞッ!!」
魚の顔をしたシーマンが叫び出す。
その言葉に、船の中から顔を出して来る女性が居た。
「んー……なあに?うるさいんだけど」
眼を擦りながら、ビキニの上に上着を羽織る女性だ。
首元には、小型のマスクが下げられており、海中で使用する小型の酸素ボンベだった。
見た目は美人である、白色の髪の毛がふわりとした巻き髪だった。
「女も居るのか」
「ギョギョギョ!!こいつは良いッ!!そいつもこっちに乗せろッ!!!」
海野カツオは振り向き女性の顔を見た。
「おいエイファ、出てくんなよ、話が拗れるだろ」
女性に対して、突発的な怒りを浮かべる海野カツオ。
彼女は目を擦りながら、艶のある下唇を舌先で濡らす。
「ん……ああ、これ、カツアゲ?……あーあ、ついてないなあ」
軽く欠伸をしながら、船の中から身を乗り出した、エイファと呼ばれた女性。
すらりとした体型、モデルの様に見蕩れる姿にシーマンたちは垂涎したが、彼女の姿に違和感を覚えた。
「ああ、ついてないって、あんたたちのこと……」
エイファは、臀部を軽く手でなぞる。
それと共に、するりと、彼女の尾骶骨から伸びる黒色の尻尾が現れた。
黒色の尻尾の先端は尖っていた、そして、その尻尾には、白色の鎧の様なものを嵌めている。
尻尾の先端を、自らの手に近付けると、尻尾をうねらせて、鎧の様な、先端が鋭利な鉤爪を外していく。
「こういう海賊をカモにする海賊が居るって聞いた事なあい?」
白骨死体で作った様な真っ白な鉤爪。
それを、一本一本丁寧に、人差し指、中指、薬指、小指へと嵌めていく。
今度は反対側も同じ様に、エイファは鉤爪を嵌めていくが。
いち早く、シーマンたちは怖気を感じ取った。
海賊を標的にする海賊、その話を聞いた事があるのだ。
「撃て……野郎共、撃ちやがれぇ!!」
叫ぶシーマン。
その声に反応し、自動小銃を使いエイファに向けて発砲するのだが。
エイファの瞳が深い青色に輝きだした。
それと共に、射出された弾丸が停滞していき、彼女の目の前で完全に停止する。
彼女は空中で漂う弾丸を、鉤爪の切っ先で軽く触れると、弾丸は重みによって沈んでいく。
「深海の、呪い……」
シーマンたちは、恐れ、銃の発砲を止める。
微笑を浮かべるエイファは、彼らが行う行為が無駄である事を理解させた。
「無駄無駄、あんたたちは、シーマンだけど、あたしは……あんたたちが崇拝する神様に睨まれた存在なんだから」
地表を覆う蒼き海。
大陸が沈没したのは地球温暖化による現象でも、天変地異による地殻変動でも無い。
全ては、深海の底に眠るとされたバケモノによって引き起こされたものである。
深海よりも深き、次元の穴を塒にする別次元の神。
そのリヴァイアサンが目覚めた事により、次元の穴から這い出た。
それにより、塞き止めていた異次元から様々な漂流物が放出。
これが原因で水深が上昇し、大陸を飲み込んだ。
その際に、異次元の住人である、シーマンたちも解かれたのだ。
滄溟主は現在、深海を泳ぎ、人間に寵愛を与える通り魔と化した。
寵愛を受けた人間は、肉体が変化していき、海洋生物の特徴と共に、海に関する力と操作する力を得た。
エイファは、滄溟主の寵愛を受け、エイ種の特徴を継いだ
「なんで銃火器が効かないんだ!?」
「魔力放出だ、魔力が水と同じ性質を持ち、周囲に放つ事で弾丸を止めやがったッ!!」
銃火器を水中に向けて撃つと、水中の抵抗力により銃弾は推進力を失う。
水中で扱える銃火器ならば、飛距離は伸びるだろう。
だが、彼らの粗悪な銃火器では人は殺せても水中では威力は半減以下だ。
「我らが神の権能を使えると言う事は、この女が言っている事は本当なんだッ!!」
シーマンたちがどうするべきか考える。
それよりも早く、エイファは地面を蹴った。
肉体から放たれる魔力の水の中で泳ぐ事で、空中を遊泳し普通に走るよりも、それ以上の速度で移動が可能となる。
船上へと着地した彼女は楽しそうにエイの尻尾を揺らしながら、指先に装着した鉤爪をピアノの旋盤を弾く様に軽やかに動かした。
「じゅ、銃火器は使えねぇ、ナイフだ、ナイフで殺せェ!!」
「んはっ……逆に捌いてあげる」
目を細めて、エイファは腕を振るい、シーマンたちに接近すると、鉤爪を使いシーマンたちを刺し殺す。
手際良く、ナイフを構える腕を斬り落とし首を突き刺す。
銃火器を使って攻撃しようとしたシーマンには、銃火器を鉤爪で切り落とし喉や胸を何度も繰り返し突き刺す。
「うぉおおお!!」
背後を狙い奇襲を仕掛けるシーマンには、自慢の尻尾を使い、鋭利に尖った先っぽを突き刺し、毒を流し込む。
敵側の船上で繰り広げられる惨状に、頭を悩ませるのは海野カツオだった。
「ああ畜生……おっぱじめやがった……エイファ!!オメェ加減しろォ!!俺の悪評が広がるだろうがァ!!」
これが、海野カツオが海賊として呼ばれる様になった原因である。
彼の下には、二人のリヴァイヴァーが配下として集っていた。
残虐非道な殺戮行為を行う彼女たちを束ねる海野カツオは、海賊として恐れられる様になったのだ。
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