第18話
進路が決まったら提出する進路票を出し忘れていた事に卒業間際に気が付いた私は、職員室に向かっていた。
先生には私はぼんやりしている、よく卒業できたなと呆れられたけど、先生だって忘れていたんだから同罪じゃないか。
そんな昨日の話を思い出しながら歩いていれば職員室からりっくんが出てきた。
校内で珍しく、りっくんも一人。私も一人。
失礼します、と礼儀正しく室内に向かって腰を折った。
背筋を綺麗に伸ばしたその姿に、ああ、りっくんってかっこいいんだなと……何故か今更そんな事を思う。
大学受験に面接は無いからと、受験中もそのままだった明るい色の髪は羨ましくなるほどサラサラで、中高で一気に伸びた身長は180cmを少しだけ超えている。
すっきりとした切れ長の目も高い鼻も唇も、完璧なバランスで配置されていて。
ずっとサッカー部のレギュラーだったんだから運動神経も勿論いいし、中学から延び始めた成績も、三年生になって部活をしていた時間と情熱を受験勉強に注ぐようになってからは更に伸びた。
性格だって、意地悪で素っ気ない所もあるから見えにくいけど本当はすごく優しい。
りっくんはそうちゃんみたいに甘くはないけど、さり気なく人に優しくできる人。
りっくんの事が好きな女の子が何人もいる事を私は知っているし、りっくんがモテるのは当たり前だと思ってる。
幼馴染の関係をうらやまれる事は今まで何度もあったし、私はりっくんの事は大好きだ。
だからりっくんがダサいとか、カッコ悪いとか思ったことなんて一度も無いない。
「かっこいいでしょ? りっくんは私の自慢の幼馴染なんだから」いつだってそう思って鼻を高くしていた筈なのに、何故今更そんな事を改めて感じたりするんだろう。
思わず足を止めて眺めていたりっくんが、顔を上げた途端私に気が付いた。
りっくんは驚いた様に目を丸くする。
その表情に、何故か私の心は苦しく騒めいた。
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