第36話

バカだよな、と今になれば思う。





偶然知り合って親しくなった彼と会うのは何時だって夜だった。



いつだって思い返せば車からホテルのひたすら密室コース。



「仕事が忙しいから。」と言われれば、事実あたしも忙しいから納得してた。



疲れた顔で「分かってくれる女は奈々だけだ」なんて言われて、彼を理解出来るのはあたしだけなんだって酔っていた。



昼間会うことが無い事も、お互い仕事を持っていて、休みが合わなければ当然だと思ってた。



外で手を繋いだ事すら無かったけれど、そういう性格の人なんだと思っていた。





サインはいくらでもあったのに、見え隠れするそれらに、あたしはいつだって自分の都合のいい様に言い訳を繰り返してた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る