噂のカップル
翌日
朝は思っていたよりも憂鬱にはならずに、足取り軽く学校に登校していた。
しかし歩く道にはすれ違いざまにヒソヒソと小言を言ってくる人も居た。
「市ノ瀬さん、センス悪っ!なんであんなダサ男と付き合ったわけ?」
それは前々から市ノ瀬にちょっかいをかけてた誰かも知らない他校からの言葉だった。
(意外とダメージ入るなぁ⋯)
これからのことが徐々に不安になってしまっていると肩に後ろから手を掛けられた。
(こんな事する人なんてさっき小言されたあの他校の人に違いない⋯やばい、逃げろっ!)
肩を振り払って走り出そうとした途端に
「え!?待ってよ総馬っ!」
「その声は⋯!?っと市ノ瀬⋯!?」
そこには若干走ったのか呼吸が少し荒くなっている市ノ瀬が居た。
「登校中に背中見えたから走って来ちゃった!おはよ!」
「あ、あぁ⋯おはよう⋯」
話す準備はしていたがこんな朝から話すとは思っておらず緊張してしまう俺に安心させる様な笑顔を見せてくれた。俺はそこで吹っ切れた。
(他校なんて関係ないじゃないか⋯隣で市ノ瀬が笑ってくれているならそれでいいな⋯)
「それで昨日のことなんだけどな、市ノ瀬は⋯」
「ねぇ総馬⋯?その市ノ瀬っていうのやめて⋯?」
「⋯⋯え!?」
「私たち、ちゃんとした恋人なのに苗字で呼ぶのちょっと距離あるみたいで嫌だから⋯だから、奏音で⋯いい、よ?」
流石は学園のアイドル様だ。
可愛さで吐血死しそうになってると学校に着いた。
校内に入ると若干視線を感じるが決して他校生が送ってくるようなキツイ視線ではなく見守るような視線だった。
(これが奏音のカーストパワーなのか⋯凄すぎるぜ⋯)
別々のクラスに行く別れ際に奏音が振り返ってもじもじとしながら聞いてきた。
「今日、お仕事ないんだ⋯?あの⋯その、一緒に帰れますか⋯?」
赤面しながらも問いかけてくるのが堪らなく愛おしくなってしまって抱きしめたくなる気持ちが溢れそうのなった。
(い、いかん⋯イマージェンシー⋯イマージェンシー⋯)
心を落ち着かせ笑顔で応える
「分かった⋯!けど大丈夫か⋯?多分俺のクラスのホームルーム、滅茶苦茶長いぞ⋯?」
「全然いいよ⋯!何時間でも待ってるね⋯!」
「流石に1時間待っても来なかったら帰ってくださいよ⋯!?」
「何でよ⋯!一緒に帰るそれでいいでしょ⋯!?」
「いや流石に⋯⋯分かった。なるべく早く行くから待ってて⋯」
「うん!じゃあ、また放課後⋯!」
奏音と話せる。この幸せだけで俺は今日も学校を頑張れそうだった。
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